Milky load.

□\ crown
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「ゴチョーさん、下の人たちが動いてます。俺の無線には何も入って来ませんが、何て指示が出てます?…ゴチョーさん?」

「撤退だ。」

「第一が来るまであと十分はかかるって言ってませんでした?まあ、今回は流石に早い方ですが、大所帯は組むまでに大変ですよね。街が瓦解してたら乗り物で来れませんし。」

「…十分。」

「第五部隊はこれ以上頭数を減らすのを避け、一旦引いて第一を待つ事にしたんですね。俺達はもう無理でしょうが、時間稼ぎの為に置いてかれたんでしょうね。」

狙撃組は四人、本隊に近い二人は既に撤退済みだ。
敵に近いリーダーと伍長が本隊に合流しようとすると弾幕を掻い潜らなければならない。
リーダー一人なら何とかなるが、それでは第四部隊分隊の存在意義を真っ当出来ず、何より伍長一人を置いて行く事はリーダーの性格上出来ない。
十分あれば敵は狙撃ポイントを割り出しビルに侵入し、制圧するだろう。
リーダーは撤退せずとも生き残れる可能性は非常に高く、ただの兵士で狙撃を得意とする伍長は肉眼で捉えられる敵を相手に生き残る事は出来ない。
どうしようもない状況に、せめてリーダーは最後まで共に仕事をする事にした。
しかし、敵を零時とした四時の方向にあるビルから銃口が向けられた。
伍長のライフルで、充分射程範囲に入っている。

「疫病神、おまえの所為だ。」

「今更俺を殺したって貴方のお仲間は迎えに来ませんよ。」

「仲間!?味方を見捨てるような奴等が仲間だと!?」

「状況的に仕方の無い判断ですし、それでも全員が全員快諾したとは限らない。貴方が生きたがる様に彼らだって生き残りたい筈。貴方が彼らの仲間で居たいなら援護射撃をする事をお勧めします。」

スコープ越しに伍長の眼力が強まった事を察し、リーダーは頭を低くした。

「あと、俺も殺さないで下さい。無意味ですし、多分俺が生きてる方が長く時間稼ぎが出来るし、沢山敵を殺せます。何より俺は彼らの撤退を助けたいですから。」

「…疫病神が、何故?」

伍長はスコープから目を離し、リーダーを見る事が出来なくなりまたスコープを覗いた。
目の前に見える少年は社会のゴミの集団のリーダーで、それに相応しい扱いを受け、その様に扱う人間を恨んでいる筈で、それは伍長も重々承知だった。
それが何故、その様な事を言い出すのか全くわからなかった。

 

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