曖昧な僕ら。2

□藪を突くとロクな事がない
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Bのプリン頭は、夜勤明けに改めて見ればあまりに見苦しかった。
Bはせめて金髪だけでも切り落とし、疲れきって帰宅した。
冷蔵庫から缶ビールを取り出し、シンクに腰を預けた。
爽やかな音を立てて開封し、最高に美味しいキンキンに冷えた微炭酸のアルコールを煽った。

「で?なんでそんな事になってんだ?」

「「こいつがムカつくからだよ。」」

Bに見向きもせずAとCは互いに胸倉を掴み合い、頬を腫らせている。
Aはソファに押さえ付けられ、Cはソファに片足を立てている。
自分の本が数冊、Aの足元にあるので、それだけが心配だ。

昼間、Aを小奇麗だなんて思ってしまった自分が恥ずかしい。
Aなんて服を着た野生動物扱いで十分だし、Cも文系美青年の皮を被ってはいるがとんだベルセルクだ。

いつからやっているのか静かではあるが、かなりの乱闘っぷりでも部屋は少し乱れるだけに留めている。
すごい技術だとは思うが、家主としても医者としても感心している場合ではない。

「他人んちで何やってんだ、馬鹿野郎共。よそでやれ。」

Bはビールを飲み干し、シンクに転がし、服を脱ぎながら風呂に向かう。
スケベなCはそこでやっとBを見て、Aの胸倉を離した。

「B君、黒髪やん。髪切ったんや、やっぱB君の白い肌には黒髪が映えるわ。」

「おお。おまえ、そっちの方がいいぞ。」

「ふん、あんたらにとって見た目が慣れ親しんだクソガキの方が扱いやすいからか?」

「「あ?」」

AとCが怪訝に顔を歪ませると、半裸のBは振り返り、首から下げていた鍵をAに投げ付けた。

「俺はもう子どもじゃない。見た目で決めつけるな。扱いを変えるな。腹が立つ。」

「「ああ。」」

今度は同時に納得され、我ながら子どもの様な言い草に舌打ちしたBは、バングルやその他のアクセサリーを外して丸めてCに投げ付けた。
AもCもBに投げ付けられたものをしっかりと受け止め、血がにじむ口の端を緩めた。

「巳鶴は俺らから見ればいつまでも子どもだ。素直に甘えて来いよ。」

言葉にしたのはCだ。
Bは拳を握ったが、Aの言葉が解いた。

「一番見た目にこだわってんのはテメエだろ。金髪だろうが赤髪だろうが、いい大人なら自分の好きなようにしたらいいじゃねえか。」

Bは開いた手を顎の下に添え、「ふむ」と唸った。

「確かに。赤く染めるのもいいな。」

「やめて、B君。俺は黒髪がええ。それ以上髪と頭皮を痛ませやんで。」

今思えば、染めるイコール金髪の発想しかなかったBは驚いた。
Cのような銀髪でも、もっと大人しい茶髪でもよかったのだ。

「…う。」

Bの顔が少し赤くなる。
Aは腹でも冷やしたかと、Cは風邪でも引いたかと一瞬思ったが、Bが元気よく風呂に入ったので特に何も言わず、各々黙って冷蔵庫からビールを取り出し、喉を潤した。
Bはシャワーを頭から浴び、洗うというよりしばらく掻き毟り続けた。



決して、口を酸っぱくして決して、俺の今のスタイルはAをリスペクトした結果じゃねえ! by B

 


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