曖昧な僕ら。
□恋人以上友達未満
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「ねぇA、腹減った」
「その辺にいる鳩でも食え」
「可哀想だから食えない」
「なら餓死しちまえ」
「冷たいなぁ。誰の所為で昼飯食えなかったと思ってるのさ」
「知るかよ」
片手で腹を押さえながら前のめりになって隣を歩くBが、目も合わせてやろうとしない俺に恨みの念を込めた視線を送ってくる。
加えて時折聞こえてくるBの腹の虫が、本当に空腹なんだとしつこくアピールしてきやがるもんだから、そりゃあ返事が適当になるのも仕方がない。
…ったく、これだからガキは困る。
「わーったよ、何食いてぇんだバカ」
「え、奢り?やった!じゃあー…あっ、あそこのクレープでいい」
何だこいつ、バカを軽くスルーするほど腹減ってんのか。
「僕スペシャルね。おいしそー」
「スペシャル2つくれ」
「えっ?Aも食うの?」
「あん?食っちゃ悪いか」
「いや、Aの奢りだからいいけど」
「ありがとうございます。お二つで千円になります」
二人分の金を払い、クレープを受け取って適当に座れる所を探し歩く。
クレープ車の向かいには公園があり、少し歩いて行くと芝生が広がっている。
「んー、美味い。Aありがとっ」
「おう」
美味そうにクレープを頬張り無邪気に笑うBを見た瞬間、「可愛いなこいつ」と思った自分に驚いた。
…何だ。俺、熱でもあんのか。そうだ、きっとそうだ。
Bは先に走っていって、「ここ座れるよ!」と指差した場所へ座る。
追い付いた俺もBの隣に座って、やっとクレープに口をつけようとしたとき、どこからともなく子犬が走ってきてBの足に飛び付いた。
わん!きゃわん!
「おわー可愛いわんこ!首輪付いてるから迷子かな」
「シュナウザーか。まだちっせぇな」
「シュナウザーって犬種?Aよく知ってるね」
「犬好きだからな」
「え、」
俺とBの足元を何度も行き来する子犬の背中を撫でてやると手の甲を舐めた。
それを隣に座る間抜け面が眺めている。その開いただらしない口を何とかしろ。
「んだよその顔は」
「…だってAは動物が自分の足下にいようものなら問答無用で蹴飛ばしそうだから意外で」
「……俺はそんなに極悪なイメージか」
「うん」
このバカ野郎、即答しやがった。
足下に犬っころがいなけりゃ蹴飛ばしてやったのに。