曖昧な僕ら。


□遭遇
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どーでもいいような一日が積み重なるどーでもいいような人生。

なんか楽しいことないかなあと思って厄介な世界に足を突っ込んでみて、最初だけは楽しかったがしばらくして慣れたらやっぱりそれもどーでもよくなって、なんか楽しい事ないかなあと思うだけでもうめんどーくさいから何もしない人生。

昨日も仕事、今日も今から仕事、明日も仕事。

明後日は待ちに待った休日。
でも何も無い一日には変わりない。
うだうだ文句言ってもなくなるわけじゃないしだからといって死にたいわけでもないし、これからさらに積み重なるであろう退屈に早く押しつぶされたいなあと思いながら家を出た。

何もしないと言ってもそれなりに何かないかなぁと期待しているからいつも寄り道する<ちょっとしたジョギングにも最適な広い公園>に今日も寄り道する。
仕事が仕事なだけに時間帯的にあたりは真っ暗。
公園にいてしかるべき人種、すなわち子どもだとか若いママさんだとかは当然いない。
いるのはホームレスと普通に飽きた恋人くらいで今日も変わりない。

「つまんねー。」

そう思って足早に通り過ぎようとしたが、ふと自販機が目に入り起きてから何も飲んでいないことを思い出し尻ポケットに手を伸ばした。

「あり?」

財布がない。
落としたのかと、振り返ればそこには確かに財布があったがそれは宙に浮いていて、肝が冷えたが更に視野を広くするともっと驚くものがあった。

「こんばんは。これおじさんのですよね?落としましたよ。」

財布は宙に浮いているのではなく、頭に泡を乗せた半裸の少年の手に乗っていた。
もう片方の手はわしわしと頭を洗っている。
咥え煙草から落ちた灰を避けて更に財布を突き出してきた。

「あのー、僕風呂の途中なんで早く受け取ってくれませんか?」

「あ、ああ。悪り。さんきゅな。」

「いいえ、どういたしまして。もう落とさないようにしてくださいね。」

財布を受け取ると少年は両手で頭をわしわしさせながらペタペタ素足で公園の林へと消えて行った。

「え、…えええええええええええええええええええええええ!?」

今の何?今の何??今の何???
風呂の途中っておまえどこの家から俺の財布を拾いに出てきてくれたのてゆうかどこの家からこの公園見てんの近くにねえだろ民家てゆうかええええええええええええええええええ!?

夢オチを期待して頬をつねってみるがただ痛いだけでしかも少年の姿が消えた今したって意味がないと気付く。
それよりもずぶぬれの少年が残した足跡の方が顕著に現実だと語っていた。

呆然と少年が消えた方向を眺めていると、ジャケットに突っ込まれた携帯が震え出し柄にもなくドキッとした。
今それどころじゃねえんだよ誰だコラと苛立たしげに取り出す。
上司からの着信で意外にも長い時間が経っていたことを知り、とりあえず今は仕事へ向かって走り出した。

 

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