曖昧な僕ら。


□頼れる相棒
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夜9時過ぎ。
アルバイトの引継ぎを終え、自転車を立ち漕いで急いで帰る。
本当は晩ご飯の買出しに行きたかったけど、Aから煙草が切れたからすぐ買って帰って来いというジャイアンメールが届いていたからだ。

ニコチンが切れると途端に機嫌の悪くなる同居人には困ったものだ。
しかしそれ以上に今日は後ろをつけてくる黒い車の方が厄介だ。
近道の為に公園に入る。
公園なら車も入ってこられないし、ちょうど良いと思ったのが大間違いだった。
横から飛び出した男に自転車ごと押し倒された。

受身を取った僕はかすり傷程度で良いとして、Aに買って貰った自転車は大惨事だ。
曲がったハンドルが力技で直ると良いけど。
ずれた眼鏡をかけ直し、立ち上がる。

暗い公園のもっと暗い所から数人の男達が湧き出てきた。
僕みたいな一般人が考える様な事くらい、その手のプロにはお見通しだったらしい。
要は嵌められたって事だ。

「どちら様が僕に何の用ですか?」

「黙ってついて来い。」

「…ですよねー。」

父さんか母さんか兄さんあたりが家出息子(弟)を回収しに来たのかと思ったけど、それにしては乱暴なので同居人Aの関係者だ。
全く困ったものだ。
ついてくる気配のない僕に男達が一歩迫る。
こういう時、どうすべきなんだろう。
どうすればAに迷惑をかけないんだろう。
Aは、何を迷惑と思うんだろう。

「いや、どーでもいいや。」

Aは僕の事なんて一切考えてないんだし、僕も考える事なんてない。
ポケットで携帯が震える。
きっと煙草の催促だ。
それよりも目の前の今にも飛び掛りそうなくらい敵意満々の男達だ。
気付けばかなり迫って来ていた男達に構える。

登録している人達に迷惑をかけないように携帯を折っておこうと考えたけどやめた。
居候の身でAから貰った物をこれ以上壊すのは躊躇われる。
うーん、帰れたらAに怒られそう。
この量には流石に勝てそうにない。

 

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