曖昧な僕ら。
□Xmas
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ケーキをテーブルに置いて不良サンタの頭から帽子を強奪、ちょっと温かいそれを頭に乗せる。
部屋に戻ってクローゼットからこの日の為に用意しといたプレゼントを引っ張り出して来た。
「はい、メリークリスマス。一応お世話になってるし、ちょっと奮発したよ。」
「…。」
案の定ぽかーんと見上げてくる無精髭おっさんの額をプレゼントで軽く叩いてやる。
「言ったでしょ?プレゼントを交換するのもXmasのイベントの一つだって。僕のサンタは職務を放棄した様だから、Aからのプレゼントに期待する事にする。」
「ああ、そう。」
「で?プレゼントは?」
「あれ。」
Aが煙草を持った手で適当に示す先、テレビの脇にそれはあった。
いそいそ駆け寄って可愛い包装紙を丁寧に破る。
現れた中身は発光しているかの様に見える程素晴らしい物だった。
「こ、これは大人気ファミリー向けゲーム機mii!」
「おう。CM見てうっとりする程、欲しがってただろ?」
「うん!え!?本物だよね!?」
「むしろ偽物とか日本で何処行きゃ売ってんの?」
「サンタさんありがとう!」
「うお、っと。」
帽子をAの頭に戻して不良サンタの頭に抱き着く。
いくつになっても人はサンタが大好きだ。
煙草を灰皿に投げた不良サンタも抱き返してくれる。
「すっごい嬉しい!この一年、Aに虐げられても健気に良い子にしてて本当に良かった!」
「生意気言ってっと没、」
「やったあ!僕のバイト代じゃ絶対無理だったもん!本当に嬉しい!ありがとう!」
「…。」
「サンタさん、ぐっじょぶ!」
「なあ。サンタさんBが可愛くてムラムラして来た。尻撫で回しても良い?」
「すみません。今直ぐ離れます。」
このゲームどころかXmasにも馴染みの無い無精髭のおっさんが玩具屋でゲーム機を買ってプレゼント用にして貰ってるところを想像するとからかいたくなるくらい笑えるけど、それ以上に今は嬉しいから黙っておいてあげる。
僕はたまにこのAのよくわからない所をとても可愛らしく感じる。
よくわからないけどこの人は悪い人じゃなくて良い人で悪い人なんだ。
だから大嫌いになれない。
どれだけ苛められたって良い子で居られるんだ。
今度ちゃんとXmasを教えてあげるから来年もよろしく、僕のサンタさん。 by B
(なんか違ったみたいなんだけど、何?おまえこれ確信犯?)
(はあ!?だから言うたやろ!俺も馴染みあらへんしようわからへんから余所に聞けて!何やB君ガッカリしてもうたんか!?)
(いや、めっちゃ喜んでた。)
(…ほなええがな。何やねん。惚気たかってんか。)