曖昧な僕ら。


□どんな気持ちで、何を、ここで
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世の中は不思議だ。
お母さんは美人だったけど、似ている筈の僕はそうでもない。
鏡での自己評価は勿論、思春期真っ只中なのに全然モテない。
男子校でモテても困るんだけど、健全な男子高校生としては色恋をベースに青春を謳歌したかった。
僕の青春は中高一貫で部活をベースに大充実だ。

朝練を終えて浴びるシャワーの何と気持ちの良い事か。
生活で何不自由なく育ったボンボンばっかの学校でシャワー室が清潔なのは、一重に家庭的な僕のおかげだ。
部活後のおやつが充実しているのも、胴着が光り輝く白さを保っているのも、タオルがお日様の匂いでふっくらとしているのも、道場でフィギュアごっこができるのも、夜遅くまで働くお母さんに代わり家事を頑張った僕のおかげだ。

いくらか知らないけど、確実に有名なデザイナーの手がけた高級な素材の制服を身に着ける。
制服だけで女子にモテるって話を聞いた事があるけど、あれは都市伝説だ。
間違いない。
これだけの良い制服を着て街中を無防備に歩いていても、寄って来るのは身代金目当ての人浚いくらいっていう悲しいこれが現実だ。

「ふあ〜あ。」

昨日、部活の後の塾の後に、夜遅くまで宿題をやっつけていた所為で眠たい。
朝は強い筈だし、いつも朝練で頭が冴える筈なのに、これは重症だ。
でも勉強は今の家で生きて行く為に欠かせない義務だから仕方がない。

お母さんが死んで引き取ってくれた実の父が医者で、元々超大金持ちの家系で、良い歳になって親の金で独立して病院を建てた。
それもかなりデカい。
数年たった今でも新規の患者さんが勢い良く増え続けているのは、僕の中でちょっとしたミステリーだ。
そんな大病院を継ぐのは現在医学部生の上の兄だけど、下の兄と僕もそれを支える為に医者にならなければいけない。
結果はともかく、努力する事が今の家での義務だ。
それをしない下の兄は、妾の子と同じくらい冷遇されている。

しかし、彼は頭が悪いわけではないどころか、かなり頭が良い。
株とか投資とかで結構稼いでいて、浪人生っていうより実業家みたいだ。
二人の兄の実母は、彼女自身の為に下の兄にもにレールを用意したけど、彼は確かにそのレールを終着駅まで快適な速度で走れただろうけど、彼は電車では無かった。
改造バイクか、改造車か、なんかそんな感じのちょっと車検が危うい感じの乗り物だ。

 

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