曖昧な僕ら。
□何か用かい
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てぃりてぃりてぃりん♪
てぃりてぃりてぃん♪
入店の音楽を聞き、Bは今度このコンビニで開催されるスイーツキャンペーンのポップ作りから顔を上げ、神様お客様を迎えた。
「あ、」
「久し振り。」
白髪に、良く見ると紫色の瞳が神秘的な超絶美形の男に笑顔で手を振られ、夜行性のBの白い頬が薄桃に染まる。
他の客の手前、美形ことCは、直ぐに目的の昼食選びに向かい、Bも慌てて内職に戻った。
「580円になります。」
「ほな600円で。」
「はい。20万円のお返しです。」
「ふふっ。相変わらず田中君は可愛えなあ。」
Cさんこそ相変わらず良い声だなあ、なんてBの思考が会話中に飛ぶ。
CはBの頭を撫でて我に返らせた。
「最近、見かけませんでしたが、お忙しいんですか?Aは暇そうですけど。」
「んー、あいつと俺は同じ職場で働いとるけど、仕事が全然ちゃうでなあ。」
「身体に気を付けてくださいね?」
「あはは。それは上司に言ってや。」
レジ袋の中のサンドイッチとドリンクとデザートを見ながらのBの気遣いに、Cは渇いた笑みを浮かべる。
Bは俯いたままだ。
訝しがって顔を覗き込むまでも無い。
Bの耳は真っ赤だ。
「れ、連絡をくれれば、…その、Cさんの分も、僕で良ければ、ご飯、作るので、また、お時間があれば、僕んちじゃないけど、遊びに、来て下さい。」
「…。」
「!」
ぽん。
無言でBの肩に手を置いたCは、自分の身体の震えを止められない。
それは別の物を必死に止めている震えだからだ。
恐る恐る上げられたBの顔には「余計なお世話でごめんなさい。」と書いてあり、Cは胸キュンで崩れた顔を慌てて整える。
「Aもおる時に行くわ。」
「はい。勿論です。僕だけじゃ間が持つかどうか。」
「その間に魔が差すかもしへんからな。」
「…え?」
Cは幸い聞こえていなかったBの肩から手を退け、その手でレジ袋を掴んで慌ててコンビニを出て行った。
Bは、人目を集めるくらい動きすら格好良いCが見えなくなるまで見送り、肩を落とした。
「(あんなに急いで。忙しいのに長い事引き止めて、悪い事しちゃったな。)」
頭を振る。
前向きなのが取り柄だ。
「(よし!美味しいご飯で挽回だ!)」
拳を握って顔を上げた。
「…あのう、」
「ハッ!?すみませんでした!」
そこで漸く、申し訳無さそうに弁当を差し出すサラリーマンが目に入り、また真っ赤になった顔を慌てて下げた。