曖昧な僕ら。
□ゆきんこ
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「脱いだ服は籠に入れておいて下さい。洗濯して、エアコンに当てておけば結構乾きますから明日の朝、乾燥機で仕上げますね。それまで僕のジャージを着ていて下さい。大きめだし、Cさん細いから大丈夫だと思います。」
「おおきに。」
「今から僕は晩ご飯ですけれど、Cさんお腹は空いてはいませんか?」
「お構いなく。」
そう言いながら、身体が暖まり落ち着いたCの腹が鳴る。
Cの端正な顔が照れて歪み、赤くなる。
Bは楽しそうに笑った。
「まずはお風呂で身体を温めて下さい。」
出かける前に掃除を済ませておいて良かったと笑うBに、Cはまた顔が熱くなるのを自覚した。
Bは下ごしらえのおかげで夕飯を手際よく用意していたが、Cが風呂を終える方が早かった。
「お先に。」
「はい。もう少しで夕飯出来ますから、テレビでも見ていて下さい。」
「飯が炊けるんと、それ、火が通ればええん?」
「はい。」
CはBが用意した食器類を見て頷く。
「後は俺がやっとくでB君も風呂入りーな。」
「いえいえ、ゆっくりして下、さ、…い。」
そこでBはやっと顔を上げ、固まった。
いつもはポンチョに隠された身体は、すらりとしてはいるが、柔らかいジャージ生地のおかげで筋肉質な身体である事がよくわかる。
白髪に見えるが、実は翳るとわかる銀髪に、良く見ると紫の大きな瞳。
ジャージを来たCはいつもの上品な雰囲気とは違うが、それでも非常に格好良かった。
水も滴る良い男とはよく言ったものだ。
そんな惚けるBの頬に、Cは難なく触れた。
まだ冷たい。
暖房と台所の熱気で大分室温は上がったとはいえ、今日の寒さは身体の芯まで冷える。
Cは、吃驚したBを宥める様に頬を撫でた。
「俺も遠慮せえへんで、B君も気ぃ遣わんでええよ。」
「…じゃあ。」
Cの手から逃げる様に作業の手を止めたBは、手を洗い、エプロンを外す。
それをCに手渡し、風呂に逃げた。
風呂から出たBは、自分が作っただけよりも美味しそうな夕飯に目を輝かせた。
「凄い!Cさん料理も出来るんですか!?」
「一人暮らしが長いでなあ。」
「わーい!いっただきまーす!」
「いただきます。」
嬉しそうに食べるBを眺めながら、Cも久し振りに人と摂る夕食を楽しんだ。
「「ごちそーさまでした。」」
腹も膨れ、二人で片付けも終わらせ、Cは欠伸を漏らした。
BはせっせとAの部屋を片付け始めたが、それをCは慌てて止めた。
「俺、ソファでええ!」
「遠慮しないんじゃないんですか?」
「Aのベッドで寝る位なら床で寝る!」
「じゃあ僕のベッド使います?僕がAのベッド使いますから。」
「え、B君の、ベッド?…いやいやいや。」
「?」
Cは慌てて手を振り煩悩を払った。
「ソファで。テレビ見たいし。」
「そうですか。じゃあ布団運びますね。僕の。」
「ごめんな、おおきに。俺はAの布団、B君の部屋に運ぶわ。」
「よろしくお願いします。」
Bが微笑う。
Cは天使の微笑みに、危うく昇天しかけた。