曖昧な僕ら。


□持つべきものは
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佐藤がBを見つけた時、Bは警察官に捕獲され、寂れた通りの植え込みの淵に座って怒られていた。

「はい、はい。詳しい事はまた今日入った時に話します。ありがとうございました。」

佐藤は警察官に追われて余程怖かったのか抱き着いて離れないBの頭を撫でながら、自分達の店長との通話を切った。
Bが立ち寄ったコンビニの方の店長と自分達の店長が電話で話し合い、事情とBの素性に納得した警察官は、Bに逃げた事を叱ってからさっさと帰って行った。

「もー、最初から店に掛ければこんなに怖い思いをせずに済んだのに。」

「…。」

Bは佐藤の胸で頬を膨らませて不貞腐れた。
偽名を使ってさえいなければ直ぐにそうした。
煙草は自分のコンビニかいつもの店以外ではもう買わない。
Bは硬く決意した。
その頭上で佐藤はまた電話を掛ける。

「心配を掛けてすみません。大丈夫でした。」

『良いって、良いって。今日暇だし、そのまま帰って良いよ。』

「あざーす。」

他のバイト先との連絡も短く済ませた佐藤は、Bの視線を感じて苦笑った。
Bは今更恥ずかしくなって佐藤から離れた。

「ごめんね。バイト中に、しかも変な事で呼び出したりして。」

「構いませんよ。今回は特に人生においてそうそう無い大ピンチでしたしね。」

「うん。23歳にもなってガチ泣きしそうだった。」

「あはは!半分泣いてたじゃないですか。田中さんは本当にかーわいースねえ。」

可笑しそうに笑う佐藤に、Bは顔に熱が集まるのを自覚した。

「ふん。バイト代には満たないだろうけど、先輩がお礼にちょっと良いご飯おごってあげるよ。」

「今それ言うんスか!?今さっき俺より年下に見られてたのに!やべえ、超ウケる!田中さん、ナイスギャグ!」

ついに腹を抱えて笑い出した佐藤の頬を抓ろうとした時、Bと佐藤の元に団体様が到着した。
パニックになったBが掛けまくった、コンビニ仲間達だ。

「来る途中ラインでやりとりしてたんスけどね。とにかく何事だって心配してたんでさっき簡潔に無事だったって送ったんスけど、皆もう飛び出してたんスね。」

息せき切って駆け付けた彼らは、無事なBを見て ほっ と溜め息を吐き、今度は嬉し涙で半泣きになるBに文句どころか渡辺と中村に至っては物理的に身体もぶつけた。

「あーあ。田中さん今日のランチで破産確定ッスねー。」

佐藤は皆に愛されるBを微笑ましく見守りながら、諸悪の根源にほんの少し腹を立てていた。



ぎゃっははは!何それ超ウケる!! by 諸悪の根源

 

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