曖昧な僕ら。


□濁った牛乳
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今週、Bはとても疲れていた。
渡辺とカラオケでオールしたり、高橋のアルバイトを手伝ったり、鈴木が掛持ちしているサークルの一つに顔を出したり、小林に勉強を教えたり、佐藤のライブを見に行ったり、極めつけに今日は早朝共にバイトを上がった中村の家でゲームをして過ごしていつの間にかもう夕方だ。

「流石に今日ヘルプの電話があっても電波は届かないなあ。ただいまー。」

それでも基本元気なBは今日も溌剌と帰宅し、玄関に脱ぎ散らかされたブーツを見て「今日は二人分ご飯作る気起きないから食べに行こう集ろうよしそうしよう」と決めた。
直ぐ出かけるならそのままで良いやとBも靴を脱ぎ散らかし、リビングに入って固まった。
半裸のAは火の点いてない煙草を咥え、膝に肌色の何かを乗せてソファに踏ん反り返っていた。

「よお。」

「すみません。部屋間違えました。」

「は?」

Bは そっ と扉を閉めて玄関で脱ぎ散らかした靴を一旦揃えて履き、そこに出て号室を確認した。
間違いない、ここだ。
Bは笑顔で目を閉じ、額に手を当て、暫く深く息を吸って吐き、ゆっくり目を開いた。

「うん。僕、疲れてるしね。目も悪いし。…ただいまー。」

Bは始めからやり直し、もう一度リビングに入って固まった。

「何やってんた?おまえ。」

ああ、間違いない。
BはAの膝に収まった肌色の何かを改めて確認し、視界が ぐにゃり と歪んだ。

「わ゛あああああああッ!?」

「馬鹿、デカい声出すな!さっきやっと寝たっつうのにって、おい!?」

Aは奇声を発したまま家を出て行くBを目で見送り、膝の中で大人しく首を傾げる赤ん坊を真似た。

 

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