曖昧な僕ら。
□女子会
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仕事を終えたCは、お忍び芸能人の様な格好で指定された飲み屋に向かった。
女子が好みそうな華やかな外装に、小さなブースに区切られ完全にプライベートが守られた、お気に入りの店だ。
掘り炬燵式で窮屈な靴を脱げ、座敷とは違い足を投げ出す事が出来る。
スタッフに案内されたCは扉代わりの花柄のカーテンを潜り、ニット帽を脱いで伊達眼鏡を取った。
「待たせて悪いなあ、姉さん。」
「先に始めてたもの。構わないわ。」
そこで待っていたのは、スーツを脱ぎ、オフショルのトップスにサスペンダー付きのワイドパンツを合わせた恵麻(エマ)が待っていた。
大振りのピアスを揺らし、小首を傾げて微笑む。
「あんたとの月一の女子会が楽しみでね。女に生まれて良かったわ。」
「いや、俺女とちゃうねんけどな。」
Cは向かいに座りとりあえず生を頼めば、残りのカクテルを煽った恵麻も生を追加注文した。
「「乾杯。」」
二人はジョッキをぶつけ合い、半分程一気に飲む。
かくして女子一人計二人の女子会は幕を開けた。
「こないだ分けてあげた化粧水、使ってる?」
「おう。結構調子良くてもう使い切ってもうた。」
「あんた男のくせに油っ気ないし乾燥肌だものね。今度、そのメーカーが新商品出すのよ。」
そのメーカーの商品は量販店には並ばず、通販もしていない。
販売員を通すか、サロンに顔を出す以外では入手出来ない。
「化粧水と乳液と洗顔のセットがトライアル期間限定で1,500円なんだけど、あんたも要る?」
「要る要る。」
「それがまたボトルが魔法の小瓶みたいで可愛いのよ。シトラスの香りのイエローと、ローズのピンク、アクアマリンのブルー、どれが良い?」
「俺がローズのピンクとか使てたらキモいやろ。姉さんの段階で二択にしといてくれへん?」
「じゃあブルー?」
「いや、シトラスで。」
「あ、そ。じゃあ注文しとくわね。消費税は負けとくわ。」
「おおきに。」
「それと、これからの季節の必需品ハンドクリームなんだけど、これまた可愛いのが出るのよ。」
「姉さんはそのメーカーの回し者か。つか可愛いもん勧めて俺をどうしたいねん。」
二人は酒と肴を追加した。