曖昧な僕ら。


□真っ赤なお鼻の田中さん
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爆弾低気圧が大寒波と結託して降らせた雪に、Bがはしゃいだのは最初だけだ。
家主の指針で全部屋暖房、炊事も基本的にお湯の使用を許可されている。
しかし、それは室内に限った事だ。
外に出れば暴風が吹き荒れ、Bの中でふんわりしたイメージのある雪が狂気と化していた。
玄関の扉を開けた瞬間、寒さに耐えかねて引っ張り出して被ったニット帽が凄い勢いで帰宅し、顔の一部である眼鏡が雪まみれになった。
Bは無言のまま扉を閉め、腕を組んだ。

「仕方がない。」

ニット帽が吹っ飛んだのは、トレードマークの前髪アップの分浮いていたからだ。
プラスチック製の立体的な星が二つ付いた髪留めを取り、前髪を下ろして再びニット帽を装備。
相棒はケースにしまい、いつぞや処方されたまま放置していた高度管理医療機器を眼球に貼り付けた。

「ついでにマフラーも巻いて行こう。」

再び扉を開けたBは、全くの別人になっていた。

 

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