曖昧な僕ら。
□BマイナスA
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今年のクリスマスは皆でスノボに行く事になった。
コンビニバイト以外が主な収入源であり元営業で顔の広い渡辺の全面協力により、移動手段に行き先も宿泊施設もとんとん拍子に決まった。
しかし、Bの表情は浮かない。
「(そういえば、最近A帰って来ないな。)」
Cは奇跡的に休みが取れたと言っていたが、割とコンビニに顔を出しているから様子が知れる。
Aが長期間居ないのは今に始まった事では無い。
Aは、短期間でも長期間でも外から帰って来ればまずジャイアンよろしく土管改めソファに踏ん反り返り、それまで一人きりで広過ぎる空間を埋め尽くす様な莫大な存在感を主張し、いつもの様に好物と煙草と酒を所望するから、つまりはそれが当たり前でどうせ今回もそういう事なのだろうが、“今回は”という事もある。
何か遭ればCが黙ってはいないだろうから“今回も”だろうが、結果が出るまではやはりわからない。
「(別に、心配なんかじゃないし。むしろちょっと痛い目見て大人しくなれば良いし。)」
少し荒めに現金ボタンを押し、客に釣りを返してレシートを不要箱に入れた。
ふわりと飛んで行ったそれを、渡辺が拾い入れ直してやる。
「田中さんって動物とか好きッスよね?」
「好きですけど、もう一匹好きでも無い猛獣飼ってるんで里親なら他当たって下さい。」
「好きでも無いのに何年も一緒に住めねえッスよ。それより、」
渡辺はBに反撃を許さず、ポケットから紙片を取り出した。
動物園の名前が書いてある。
「株主優待券の期限が今年まででさ。彼女は今一人だし、余っちゃう訳ッスよ。」
「ナベさんて何でコンビニでバイトしてるんですか?」
「へえ?聞いちゃう?」
「いや、良いです。」
聞かれて困るBは黙ってラインでコンビニ仲間の動物好きを募った。