曖昧な僕ら。2

□大人の階段
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バイトの帰り。
駅前の本屋でワートリの最新巻を買ったBは、車道の向こう側の歩道で知り合いを見つけた。
深夜でも発光しているかの様に美しい男、Cだ。
髪色や雰囲気が多少いつもと違うが間違いない。
次の交差点で道を渡り、帰路に逆らって追い駆けた。

「しーいーさんッ!こんばんは。」

「わあ、これはマイエンジェル。こんばんは。」

然程驚いていないCのわざとらしい仕種と発言に、Bはお日様の様に朗らかに笑う。

「あはは!移動手段がチャリの天使って斬新ですね。」

「お兄さんはいつB君の背中に真っ白な羽が生えて来ても可笑しないと真剣に思てるよ。」

「うはは!お疲れですね。仕事帰りですか?送りますよ。」

Cは真顔で言ったのだが、Bはそれ故によりいっそう可笑しく豪快に笑い飛ばした。
スルーされたCは苦笑いで首を横に振った。
Bこそ真顔で親指で荷台を指す。
男前な瓶底眼鏡にCも吹き出した。

「じゃあお願いしよかな。初乗りなんぼ?」

「初回限定無料、1mごとに100円です。」

「たっか!こりゃサービスに期待やで。」

Cは荷台に跨ってここぞとばかりにBに抱き付いた。

「当タクシーは新鮮な空気が売りです。」

「都会でか!」

「田舎なら虫の雨ですよ。」

「そら勘弁やで。まだ洗剤の匂いの方がええわ。」

「ちょっと、他人のパーカをフィルター代わりにしないで下さいよう。」

くすぐったいと笑いながらBは地面を足で蹴って勢いを付けて出発進行した。

 

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