曖昧な僕ら。2

□大天使とベルゼブブのお試し期間
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帰宅したAは、ベッドですやすや眠るBの隣で、パソコンに何やら忙しなく入力していたCの作業が終わるまで待った。
二人とも全裸だ。
軍属時代に入れたCの刺青を久し振りに見た。

「Fに叱られんぞ。」
「B君も心配しとった。」
「俺今英語で話しかけたんだけど。」
「B君のベッドの上じゃ日本語が公用語だぜ?」
「そいつ、絶対日本語使わなかっただろ。」
「この手の事に関して日本語の語彙は少ねえし、英語じゃ俺に使うにゃ汚過ぎるし、しどろもどろになってんのがそそった。」
「お巡りさん呼ぶか?」
「自首か?」
「俺は通報者だ。」
「だからだ。恋人達の寝室に不法侵入した罪でとっ捕まれ。」
「で?何してたんだ?」
「B君についとった悪い虫を消しといた。」
「自殺か。」
「俺は恋人だぞ。」
「元だろ。」
「未来のでもある。」
「言ってろ。」

急にBの手が宙を彷徨う。
何事かと二人が見守っていたら、煙草を掴んで止まった。
寝ながら火を点け、煙を吸い込んで吐き出して起き上がった。

「あー、うま。」
「すっかり擦れちまいやがって。」

AはBから煙草を没収し、残りを味わった。

「おまえ、Cと付き合うの?」
「んな訳ねえだろ。男漁りはやめてもいいかなって思ったけど。」
「それは付き合うって言うんじゃねえの?」
「いつでも応じてくれる便利なイケメンはセフレって言うんだ。覚えとけ。」
「あんなによがっとったんや。ただの便利棒みたいに言わんとってくれる?」
「…。」

あからさまに不貞腐れて頬杖を突くBに、Aは煙を吹き出した。

「まだまだお子ちゃまだな。しばらくは大人しくそいつを彼氏って事にしときゃ、やたら妙な因縁つけられる事も変な病気貰うリスクもねえだろ。」
「彼氏作っちまったら俺の仕事に障るんじゃねえの?」
「火遊びの醍醐味はハイスペ彼氏持ちのクイーンと寝る背徳感だ。」
「確かに。それは俺としてもいい感じに燃えるな。」

宣伝がてらデートでもするか?とCを向いたBは、Cに両手で顔を包まれキスされた。
とても人懐っこいCの笑顔に、ぽかんとする。

「やった!これでB君の公式彼氏や!」

しかし、よく見るとCの目は笑っていなかった。

「君の彼氏は情報屋やでな。“ぼや”にはくれぐれも気をつけるんやで?」
「…これ、あかんやつだろ。」
「…そうかもしんねえな。」

AとBは額に手を当て、項垂れた。



悪い虫って、やっぱおまえだろ。 by A



(デート、どこ行く?)
(健全なデートなんて年単位でしてねえから思いつかねえな。)
(そこの公園で手ぇ繋いで散歩なんてどうや?)
(うわ、寒。)
(うるせえ、A。テメエにゃ言ってねえよ。)
(いや、Aに同感ッス。オネエでもない三十路過ぎた男同士でそれはない。あ、太極拳やってっから混ざろうぜ。)
((うわ、武闘派眼鏡出たよ。))
(嫌なら出てってくれてもいいんだぞ。)

 


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