曖昧な僕ら。2

□それでも一緒にいたいから
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【それでも一緒にいたいから】


都会の朝は早く、何の気なしに見上げた空は、すでに排気ガスで曇りかけていた。
日本の青空が恋しくなったCは、早足で帰宅して激怒した。
今日も今日とて情報源とデートして朝帰りしたのだが、直行した愛しの恋人の寝室で事件は起こっていた。
愛しのBが、一番早く死んで欲しい同僚であるAに抱き締められて眠っていた。

「うるせえ。」

「B君気づかってまだ何も言ってねえだろ。」

「気配がうるせえ。」

AはBを抱き直して擦り寄った。
時間も時間だ。
刺激を与えられたBも目を覚まし、Aに気づいて顔を歪ませた。

「またかよ、おっさん。」

「仕事か?」

「当たり前だろ。社会人なめんな。」

体を起こしたBは、髪を切って黒くなった頭を掻きながら煙草を咥えた。
Aの顔に左手をついて右手を伸ばし、A越しに空気清浄機のスイッチを入れる。
その体は大きめのTシャツに覆われているが、Cは布団に覆われた下半身が気になるところだ。
BはAに腰に抱きつかれたまま、欠伸で煙を吐き出す。

「このおっさん、たまに何を思ったのか僕を抱き枕にするんだよね。」

さらっと出てきたのは日本語だ。
本人は無意識だったようで、黒髪黒目の容姿も相まって、Cは更に日本が恋しくなった。
Bはまた煙を吸い込み、煙とともに言葉を吐き出す。

「俺もまあ、今じゃ男に抱かれてる方がよく眠れるし、昔の俺はケツ触られて嫌がる可愛気があったけど、今じゃケツ揉まれたくらいじゃ何も思わねえからな。」

ここで「こんな仕事もう嫌だ」なんて漏らしたらBに呆れられる。
Cはぐっと堪え、Aを脳内で何度か殴り飛ばし、折衷案を口にした。

「悪い。俺がいる時はどんな時間でも絶対一緒に寝るから。」

「助かる。」

微笑むBは、途中から英語を流暢に話しているし、もう確かに三十路だが、BはBだ。
Cでも男らしさを感じるが、家庭環境はよくないのに健全に育った、あの頃の天使のままだ。

「朝飯、何がいい?」

「時間ねえからツナのサンドイッチ。」

「ああ。だから見覚えのねえ食パンがあったのか。」

「夜は仕事だけど朝帰るって言ってたろ。」

Bは、昔は日常的なものから凝ったものまで料理好きだったのに、今ではまったく作ろうとしない。
しかし、食べたい物をリクエストする時はキッチンにある食材で考えてくれるし、時間があればないものを買ってきてくれるし、今のように聞かれる事がわかっていて前もって準備してくれている事もある。

「ご注文、承りました。」

「疲れてるとこ悪りぃけど、チップにキスしてやるからなるはやで。」

「巳鶴も、なるはやで腰にぶら下げてるおっさん引き剥がせ。」

「はいはい。」

Cはなんかいいなと機嫌を直し、料理に精を出した。

 

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