曖昧な僕ら。2
□それでも一緒にいたいから
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Bは定時に帰宅し、暇人を連れて飲みに出た。
腹が膨れ、程良くアルコールも回っているが、隣には用心棒がいる。
人気のない夜道を隙だらけで歩くBに、Aは口元を緩めた。
「おまえ、本当に酒強くなったよな。」
「酒なんかで潰れてたら何されるかわかんねえだろ。」
「そんなに男とのセ○クスっていいの?」
「男とした事ねえの?」
「そっち側をやった事がねえ。」
「そんなん人によるだろ。そいつの性癖にもよるし、相性もある。あんたは前者、ネコは向いてねえ。」
「クイーンのご心眼か?」
「ああ。主導権握られるの、嫌いだろ?ネコは襲いクソビ○チだとしても、ある程度はタチを立たせてやらねえといけねえからな。」
「タチがネコに気づかってねえみてえじゃねえか。」
「全員が全員とは言わねえが、あんたは気ぃつかう事に労力使うくらいなら、他の便利で楽な穴探すだろ。」
Aの口元が引き攣る。
元からサバサバした性格だとは思っていたが、性関係までここまでサバサバするとは思わなかった。
Bの母親の形見である赤のセルフレームの眼鏡が、少し鼻に食い込んだ気がする。
それを察し、Bは無邪気にAを見上げた。
外出する時の目は青いが、表情はあの頃のままだ。
「それともなんだよ。家に着くまでAの恋バナでも聞かせてくれんのか?」
「恋っつーのはあれだろ?胸がドキドキするとかいうやつ。」
「最近じゃきゅんきゅんするとも言うな。」
「ドキドキもきゅんきゅんも、命の危険を感じた時に心臓かタマがそうなるな。」
「敵に恋してんじゃねえよ。」
「おまえはCに対してそんな事になってんのか?」
「まあ、あの綺麗な顔に迫られたらドキドキするし、可愛気のある事されたらきゅんきゅんするな。」
「他の男には?」
「迫られても可愛気のある事されても、下半身がドキドキするかきゅんきゅんするかだ。心臓がどうこうするのはその後、有酸素運動のせいだな。」
「Cはこいつの何に夢見て少女漫画みてえに目ぇ輝かせてんだろうな。」
「少女漫画読んだ事ねえくせに言ってくれんじゃねえか。」
楽しそうに笑うBに、Aは眼鏡を掛け直した。
周りから見て褒められたものではない人生でも、本人が元気ならそれでいい。
Aも微笑み、前を見て、通りすがりのカップルを視界の端に捉え、内心でそれが誰か確信した。
変装したCだ。