曖昧な僕ら。2

□チームBossomeの高齢化
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そう広くはない街だが、その中でも使用する範囲は1区画。
その中にそれぞれ陣地となる家を選び、作戦行動を起こす。
AとCの脳味噌筋肉バカ勢は、庭の塀に手をかけた状態でスタンバイしている。
この二人がスタート時にどれだけ狩れるかが問題だ。
その後に中衛としてFとGが構え、暴れるAとCを横目にそれなりに戦局を把握しながら先行し、脳味噌筋肉バカ達のために障害を排除して行く。
Eは大切な指揮官を守るためにお留守番をさせるべきだろうが、新参者はとにかく空気を体に染み込ませるために、自由行動をさせることになった。
ボスは一人、お留守番だ。
チームBossomeは、誰もボスを敬わない。
それでも今まで一度もボスのリボンが取られた事がないのだから、うまくいっているのだ。
ボスは長い前髪を掻き上げ、屋上で双眼鏡を片手に鼻歌を口ずさむ。

「さ〜て。初めて見る、あの小柄な子がどんな動きをしてくれるか、楽しみだな。」

恵麻の後釜はいない。
それでも、彼女が現役を退いた後に紅一点は必要だ。
性差の排除は社会性だけで、生物学的な性差はなくならない。
どれだけ意識的に歩もうと、本能に結びついた感覚は変えることはできない。
女の感覚は、男であるボスには備わっていない。
チームBossomeには、どうしても女性が必要だ。
恵麻ほど美人で、腕っ節がよく、いい男を前にしても感覚と意識のバランスを崩さず、冷静で、頭がよい女性は貴重だ。
小柄な兵士は、塀に両手と片足をかけ、スタートを待っている。

「脳味噌筋肉か。よしよし、悪くない。」

相手の指揮官がスタートを知らせるロケット花火を上げる。
その瞬間、小柄な兵士はボスが驚くほどの身のこなしで塀を超え、障害物をものともせず街を走って行った。

「おいおい、嘘だろ?」

双眼鏡を外して庭を見れば、自慢の脳味噌筋肉バカ達も街を走っていた。
精鋭部隊の斥候は3人、2人がAとCを止めるための布石だとすれば、あの小柄な兵士の身のこなしはまずい。

「F、Gと離れるな。Eはまだそこにいるか?」

屋上からの呼び掛けに、木の影からEは顔を出した。

「自由行動はなしだ。Fの穴埋めをしろ。」

Eにいつものおチャラけた雰囲気はなく、機敏な手信号で了解した。
GはFの肩を叩き、Eと同じタイミングで庭を出た。

 

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