曖昧な僕ら。2
□あなたの知らない俺
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【あなたの知らない俺】
Aは最近家にいる事が多いが、今日は珍しく外泊している。
日勤のBが風呂から上がれば、イケメン彼氏と夕食が待っていた。
一口ごとに噛み締める。
「はあぁぁぁぁ、うっま〜〜〜。」
「お粗末さん。」
話題の白ワインに合わせたという今日の献立は、カロリーは低いが品数も多く、彩りもいい。
舌はもちろん、目も美味しい。
食後の珈琲は濃い目で、腹はもちろん、心も満たされた。
片付けはBが引き継ぎ、その間にCは風呂に入り、Cがノートパソコンを片手にリビングに戻れば、Bはソファで簡単な筋トレをしながら医学書を真剣に読んでいた。
もう何度も読んでいるのか、付箋やマーカーが目立つ。
Cに気付いたBは端に寄り、Cは隣に座った。
武闘派とは言え、二人はインテリ枠でもある。
仕事がない時は常に情報を更新し、最新状態に更新された頭を使う事が仕事だ。
CにもたれていたBが顔を上げれば、Cは仕事に没頭していてもすぐに気がつく。
「何?」
「これ。」
Bが具体的に指示をしなくても、Cは新しいタブでBの「これ」を検索した。
Bは自分の知識に、英語と日本語の互換性を求める。
「ありがと。」
それからしばらく、CはBの寝息を聞きながら仕事に精を出した。
船を漕いでいたBがはっとした時には、Cの仕事は終わっていた。
「寝よか。」
「ああ。」
ベッドに入ったBは、Cに覆い被さり、深いキスをした。
応えるCに、日本語で釘を刺す。
「明日も早いので、丁寧にしなくていいですから。」
「そんな事言って、焦らされた方がイイくせに。」
「良し悪しでなく。ヤリたいけど眠たいんです。」
「情緒がない。」
「情緒より時間がないんです。萎えたならやめときますけど?」
「滅相もない。」
Cはさっと上下位置を入れ替え、加虐的な笑みを見せた。
「お望み通り、時短だろうが、ド淫乱ちゃんを満足させてやるよ。」
Cの顔は最高級、料理はプロ顔負け、仕事もできて、セックスのテクニックも種類が豊富でスマートだ。
Bは背筋を震わせながら、我ながら最高の彼氏を手に入れたものだと、改めて思った。