Milky load.

□T culling
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第四部隊、分隊。
本来不吉で避けられる数字が当てられた分隊の通称は、疫病神。
彼等が派遣される任務は大きな危険が伴い、次々と仲間が死ぬ。
魔法使いが統べるこの世界で、社会不適合のレッテルを貼られた少年達は多く、人員に不足はない。
社会、学校、道端、娯楽施設、果ては家庭に至るまで、厄介者はいつの世も存在し、創出される。
減った分増員され、数は変わらない。
違いは強いか弱いかだが、ここでは誰しも強くなければいけない。
「死ね」という命令しか下されず、逃げる事も許されない。

「はあ。」

今日も落陽と共に一つの作戦が終わった。
明日、もう一度大きな作戦があり、次の日に人員の補充がある事になっている。
とにかく今は休息だと、分隊リーダーはかつて民家だったコンクリートの四角い枠の中に入った。
その後に分隊メンバーが続いたが、そこから先は各々思い思いに散らばった。
今回は自軍勢力の末端が市街地だけに野営でないのはありがたい。
野営ならもっと散らばり、そもそも不良の集まりであるこの分隊では野営で何人か消えるのは当たり前で、奇襲を受けた時に収集が全く効かない。
まだ建物内に収まっているだけマシだ。
言う事を聞かない少年達を説得するエネルギーは膨大で、まだ幼いと言って良いリーダーは闘うよりも倦怠感を覚える。
勿論、呼びかけに応じない者はすんなり置いていくし、消えた仲間を探しに言ったりはしない。
無駄だ。
彼等の死の上には、必ずその二文字が圧し掛かる。
リーダーは他にも無駄を知っていた。

「(泣いたって無駄。逃げたって無駄。立ち止っても、無駄。)」

失った何人もの顔を、鮮明に曖昧に思い出す。
新陳代謝の激しい分隊で気付けばリーダーになっていた少年は、現状に溜め息を吐いた。
その僅かな動きで夜の闇の中、細い月や小さな星の光を反射してキラキラと、攻撃的に固められた白髪が輝く。
“無駄”を嫌う少年は、長い前髪に隠した青い瞳で無表情に床を見ていた。
手持無沙汰に カチャカチャ 銃を弄る。
魔法を使えない彼の、頼れる相棒だ。

“死にたくないならば殺せ。”

生きている事自体が無駄だと社会に言われても、彼等にとってはまだ生きている方が価値がある。
しかし、逃げずに進み続けた少年達も、結局は激務に勝てず死んでしまう。

「(相変わらずわかり易くて難しい任務だ。)」

元より人の話を聞く様な優等生は配属されず、また、少年は小さく貧相で可愛い部類に属する苛められっ子の鏡の様な容姿故に、特に嘗められる。
一応リーダーとは言え、一向に静まらない集団に命令を読み上げるだけの存在だ。
今回も「死にたくないなら殺せってさ。」と伝えた時に受けた暴行の痕を、まるで彼等の遺品の様に思い、長く残れば良いと願った。

 

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