Milky load.

□U reunion
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トパラタタ…

銃声が鳴り響く中、栗色の髪の少年の双剣が、銀髪の少年のナイフが舞う。
その二人を見守る白髪の少年は、ビルの上から二人に指向性を持った敵を狙い打つ。

ラビもユージーンも通常の戦闘で簡単に死ぬ程軟では無いが、二人が属するのは第四部隊分隊。
通称疫病神隊。
死神に愛された様な任務をこなし、本人達も死神の様に殺しまくる少年達だった本隊に負けず劣らずの仕事が与えられる。
上から有無を言わさず降って来る任務は要約すると「死んで来い。」だ。
事実、社会の厄介払いが目的のこの隊に現場判断の撤退は許されない。
帰れば反逆の意思有りと見做され、殺処分は免れない。
活きの良い身体はそれよりも酷い目に遭わされるのを、リーダーだけは知っている。
それならば闘って死んだ方が随分楽だ。
生き残るには敵を倒すしか無いのだが、今回は流石に無理なので敵に撤退して貰うしかない。

ビルの上、こんもり盛り上がった迷彩代りの襤褸布の下。
敵の死体と川の字に寝そべるリーダーは、拾い物のライフルに次弾を装填しながら溜め息を零した。

「人手も弾も足りないなあ。」

魔法使いのジーンの様に回収可能で刃こぼれのしないナイフを持っている訳でも無いし、ラビの様に化物じみた剣捌きが出来る訳でも無い。
今日来る事になっている新しいメンバーをいち早く迎えて、せめて顔と名前を覚えてやらなければならない。
一週間の内に来るのは無線から任務の内容と敵の位置だけで、どうせ死ぬ人間と思われているので補給は思い出した程度だ。
よってリーダー愛用の二丁拳銃は、もう無闇矢鱈に使う事は出来ない。
今装填されているマガジンが二つ、それも既に数発消費しているから三十発弱だ。
一人一発で倒せれば話は別だが、残弾数に対して敵の数が多過ぎる。
戦闘が長引けば長引く程援軍を呼ばれ、減る事は絶対に無い。

「仕方ないか。」

リーダーには屋上からの進撃を阻止する役割もあるのだが、それだけでは戦局は変わらないと判断した。
人間カマイタチの刃こぼれも心配だし、魔法だって無限に使える訳では無い。
何より二人にも体力の限界はある。
リーダーは弾の無くなったライフルを捨て、酔い止めを小さな歯で咀嚼し、飲み込んだ。
背骨を守る様にある鞘の止め具を外し、自身の上腕程も長さのあるナイフを構えた。
無線に耳を澄ますが、特に本部からの連絡は無い。
立ち上がり、襤褸布を脱ぎ捨てた。
昼には目立つ、死神たる所以の一つである黒い軍服が露わになる。

「被れって言ってんのに。」

自分も人の事を言える立場では無いが、感覚を鈍らせる事を嫌い、何より思春期はダサい事を気にして絶対に被らない。
そもそもリーダーよりもお兄さんの二人は、思い思いに軍服を着崩し、お洒落ですらある。
同じ年頃のリーダーにもその気持ちはわからなくもないが、立場的に心配もしなければならない。

「今度俺も真似しよう。」

精神防衛の為に余計な事を考えつつ、生き残る為に戦局を見据える。
別のビルの陰で敵同士の合図が交わされる。

「今行くよ。」

前髪を上げていたゴーグルを下げ、顔布を引き上げ、鳥の影の様にビルを渡った。

 

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