Milky load.
□V identity
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少年達は、比較的作戦本部に近い場所で同じ制服の群れを見つけた。
黒い戦闘服は第四部隊に与えられた物だ。
分隊よりも大きいそれは、間違いない。
「アルヴァさん!」
その内の一人に、本隊との合流が初めての部下を残してリーダーは駆け寄った。
金の髪を耳にかけて書類を睨んでいた端正な顔が嬉しそうに上がる。
「シルヴァ、お帰り。」
「はい!ただいまです!」
「「「「誰だあいつ。」」」」
見事に少年達の声は重なった。
「アルヴァさん!アルヴァさん!」
「へえへえ、聞こえてるっつの。」
「わんわん」と言わんばかりに無い筈の尻尾を振りたくり喜びを露わに抱き着くリーダーを、アルヴァは わしゃわしゃ 撫で回す。
その深緑の瞳はとても品の良い色をしているが、板に付き過ぎた咥え煙草が彼が元不良少年だった事を物語っている。
「「「「…。」」」」
リーダーとは正反対に不機嫌を露わにする少年達に、瓶底眼鏡を掛けた黒髪の男が柔和に声を掛けた。
「やあ。君達が新しいシルヴァの仲間かな?」
「テメエ、まだ生きてやがったのか。」
「ラビは久し振りだね。」
眼鏡の男はラビの鋭い視線も軽く受け流し、嬉しそうに少年達を眺めた。
少年達は、相手の隙の無い身のこなしに無意識に警戒を強める。
「僕は第四部隊隊長のクライヴ。よろしくね。それで金髪の彼は副隊長のアルヴァートだ。シルヴァの名付け親だよ。」
「はあ?」
ジーンが疑問の眼差しを声と共に、シメオンとレオが「あいつが」という眼差しをアルヴァに向けた。
ラビは渋面を作った。
当のリーダーはアルヴァの傍で一緒に書類を覗き込み首を傾げていた。
その頭をアルヴァは「おまえにはまだ早い」と、ぽんぽん 叩く。
「仲良いよね。」
新参者達は周囲に視線を巡らせた。
瓦礫の上で礼服を被って昼寝をする黒髪の男と、近所に居そうなお兄さんと、茶髪の手入れに余念の無いチャラ男の姿があった。
ジーンとシメオンとレオは露骨に嫌そうな顔をした。
「そういやミルキーの名付け親ってどういう事だよ?そんな年には見えねえぞ。」
「あいつ、何で勝手に坊ちゃまの、」
「レオ。」
「リーダーの名前を勝手に変えたんだよ。」
「そうそう。こいつら、リーダーの事を坊ちゃまとか呼びやがる。一体どういう事だ?」
「うーん。」
困った様に、しかし柔和に笑ったままの青年に四人は、若干勢いを削がれた。
当たりは柔らかい癖に力強くてビクともしない。
不思議で厄介な大人だ。
「こういうのは本人の口から聞くのが一番なんだろうけど、シルヴァは死んでも話さないだろうから少しだけね。」
意外と可愛気のある分隊に、クライヴは心の底からニッコリと微笑んだ。