Milky load.

□X nightmare
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「た、けて。」

銃声や爆発音の中、確かに聞こえた蚊の鳴く様な声に振り返れば、そこには手足を半分、顔を半分失くした仲間が血溜りに転がっていた。
リーダーは足を止め、その子の隣にしゃがみ込み、残った方の手を握った。

「わかった。誰か呼んで来るから楽しい事でも考えて待ってて。」

「はや、く。」

「うん。」

その子の手から力が抜ける。
リーダーは俊敏に立ち上がり、踵を返した。

「海、行きたいな。」

「良いね。いってらっしゃい。」

数歩離れた所で躊躇なくその子の頭部を撃った。
その穏やかな寝顔に罪悪感は募るが、回数をこなす内に何とも思わなくなった事の方が心を痛める。
助ける事は出来ない。
少しでも安らかであって欲しいから、相手が死の淵であっても平然と騙す。
そして、少しでも早く楽にしてあげたいから、他人の為の様で結局は自分の為にまだある息の根をこの手で止めるのだ。
しかし、どんな理由があったとしても、人殺しは自分の中ですら完全に正当化出来るものではない。
どれだけ強くなっても、この力では人を救う事は出来ないのだと思い知らされるばかりだ。

『死神。』

夜明け前、リーダーは真っ暗な部屋で目を覚ました。
約束の時間だ。
両隣を気遣って静かに窓を開け、朝日がまだ隠れたままの地平線という乏しい光源だけで身支度を整え始めた。
ベッドを綺麗にし、ジーンから貰ったくまを座らせてあげた。
自分が抱いて寝た所為で乱れた毛並みも整えてあげる。

「おはよう。」

くまの鼻にキスをして、寝間着を脱いだ。
先日の戦闘の傷の上に出来たかさぶたを見て、一瞬剥がそうかとも思ったが、まだ良いかと少し痒いけれど隊服にしまった。
着替え終われば少し部屋は明るくなっていた。
耳に多数開いた穴にピアスを埋め、最後に髪を水で濡らして掻き回し、逆立てた。

「これが、ただの悪い夢の続きだったら良いのに。」

リーダーは一度目を閉じ、深い溜め息の様な欠伸を漏らし、朝日を背に部屋を出た。

 

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