Milky load.
□Y dawn
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「どうぞ。」
「失礼します。司令官。」
無表情ではあるが不機嫌を隠さないリーダーに、ラドクリフは心の底から笑顔で応じる。
「おはようございます。」
「…オハヨーゴザイマス。」
「珍しいですね。髪を下ろしたままなんて。」
「それは、さっき、変な人に撫で回されたからです。」
昨日よりは落ち着き、敬語で話すリーダーは、ノックといい、髪型といい、ラドクリフの胸にふわりと浮くような感覚をもたらした。
「(相変わらず可愛らしい。濡れる事を嫌う小さな君をお風呂に入れてあげていたのは、もう何年前の事だろうか。…っと、いけない。)」
懐かしさに浸るとなかなか抜け出せない。
過ぎ去った日々は戻る事は無く、思い出すだけ辛いのだからと、ラドクリフは多少強引に前を向いた。
「何の用ですか?」
少し強い口調に俯いたリーダーの淡い青い目が影を作り、濃い青になった。
怒られていた時の瞳で、ラドクリフは胸が きゅっ と痛む。
思わず甘やかしてしまいそうになっている事なんてリーダーは露知らず、小さな声で話し始めた。
「昨日は失礼しました。先日終了した作戦の報告に参りました。」
「もう少し早く来てくれれば、今日一番の大仕事、第一部隊隊長殿からのありがたいお叱りのお電話に間に合ったんですけれどね。」
「!」
リーダーの顔が上がり、濃い青が淡い青に変わった。
「ヴォルフガング大佐が俺の報告に何の用ですか?」
「さあ?それは僕も知りたいものです。」
「?」
リーダーは首を傾げ一瞬考えたが、頭を振って無かった事にした。
大事なのはそこでは無い。
「次からはなるべく早く報告に来る様、精進します。」
「で?」
嫌味を言ったら悪戯好きのリーダーに楽しそうに次の報告の遅延を約束されたラドクリフは、どうせ言ったって聞きはしない事を再確認してうんざりと先を促した。
リーダーの瞳からお巫山戯の雰囲気が消える。