Milky load.
□[ abracadabra
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リーダーはほぼ同時にユージーンと目覚め、ジーンよりも速く身体を起こした。
昼ご飯に起こしに飛び込んで来たシメオンとレオは、殺気を露わに動いたジーンに対する構えを解いた。
まだ寝惚けているリーダーは、咄嗟に掴んだジーンの両手首を握ったまま首を傾げた。
「吃驚した。何?」
「いや、あいつらがうるせえから。」
「それだけで?」
「それだけで充分だ。」
何の悪びれも無く欠伸をするジーンに、リーダーは溜め息を欠伸に変えた。
「どんな理由があっても人は殺したら駄目だろ。それがまだ眠たいからって、」
「あいつらは俺とミルキーが一緒に居んのを邪魔しに来たんだ。」
「…それってそんなに怒る事?」
今度は反対に首を傾げるリーダーに、ジーンは深く頷いて見せる。
ジーンが手で催促して来たから、リーダーは「腕を掴む」から「手を繋ぐ」に変えつつ考える。
その間にいい加減リーダーを危険人物から回収しようとした兄弟が、ジーンに厚い前髪越しに睨まれ居竦まされた。
おかげでリーダーはどうも腑に落ちない事が何か、少しわかった。
「今のジーン、初めて会った時のジーンみたい。少し怖いし、好きじゃない。」
「――ッ!?」
まるで雷に打たれた様な顔をしたジーンに、またリーダーは首を傾げる。
「あれ?でも今は怖くない。どうして?」
リーダーの頭の上に大量のクエスチョンマークが浮かぶ。
その無防備さに、流石に不安が抑えられなくなった兄弟が動いた。
また怖くなったジーンに、今度は兄弟も怯まない。
しかし、誰よりも速く動いたのはリーダーだった。
「えい。」
ジーンの顔を胸に隠す様に抱き着けば、一瞬でジーンから殺気が消えた。
嬉しそうに抱き返すジーンの頭上で、リーダーは納得した。
「ジーンって、もしかしてさ。シメオンとレオの事、嫌いだったりする?」
「ミルキー以外は嫌いに決まってんだろ。」
「どうして?」
シメオンとレオが慌てふためくが遅い。
ジーンはリーダー越しに兄弟を嘲笑い、淀みなく答えた。
「俺の国を潰した国の奴らを、簡単に許せる訳が無い。」
思わず手を離したリーダーを、ジーンはよりきつく抱き締めた。
「でもミルキーは別。」
「…どうして?」
ジーンは室内の雨に顔を上げ、その滴を頬で受け止めた。
「可愛いから。」
涙を止めようと躍起になるリーダーの手を、ジーンは柔らかく制して、リーダーの小さな頬を両手で包んだ。
リーダーはジーンの手に手を重ね、震える唇をこじ開けた。
「ごめんね。」
「ミルキーは大好きだから泣かなくて良いぞ。」
「俺もジーン大好き。」
「おー、やった!」
素直に喜ぶジーンに、リーダーの涙が少し止む。
ジーンは笑顔のまま問う。
「我ながら何で?」
リーダーはジーンの手に擦り寄り、即答する。
「優しいから。」
「そっか。じゃあ、ミルキーに嫌われねえ様にたくさん優しくしてやるよ。」
すんすん。
ジーンはリーダーの顔を下げさせ、可愛らしく鳴る小さな鼻にキスをした。