Milky load.

□] melty
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いつかこんなことになると思っていた。
誰かを守って君が傷つく。
誰かを守って、君が死ぬ。
そうさせない為にここに来た。
君を守る為に、元より憎く、尚、君から笑顔を奪った国の側に“再び”立った。
ラドクリフは目の前で刻々と近付く結果を誰にともなく祈り続けた。

「…ルゥ。」

だから、薄らと開いた口と青い目に、ラドクリフは誰よりも早く身を乗り出してリーダーの顔を覗き込んだ。
聞き間違いでなければ久し振りに愛称を呼ばれた。
それだけでなく、リーダーは傷だらけの両手を伸ばし、儚い力でラドクリフに抱き着いた。
殴るでなく蹴るでなく触れられたのは幾時振りか。
泣きそうになるのを堪え、小さな身体を抱き返した。
寝惚けただけのリーダーは、ラドクリフの腕の中で健やかな寝息を立てている。

「ほらね。大丈夫だって言っただろ。」

この黒マントの男は第四部隊分隊の帰還を待ち構えていた。
リーダーを見るなりリーダーの部屋へ運ばせ、全員を閉め出して独りで治療を施した。
軽い口調の「大丈夫だ」を、よれよれくたくたの体がどれだけ尽力して得た物か、誰もがわからない訳が無かった。

「場所によって異なるけど、条件が揃えば細胞分裂を常人の何倍もの速度で行う事も出来るからね。直に傷も塞がって目を覚ますさ。これくらいだと三日もあれば戦線復帰出来るよ。」

男は無事を確認し、手をひらひら、裾をひらひら部屋から去った。
ラドクリフとしてはもっと設備の良い所に寝かせてあげたいが、男曰く、病院を連想する所で目を覚ますとリーダーがパニックを起こしてしまう。
兵士に与えられるのは、安く、硬いベッド。
そこにまた寝かせるくらいなら抱いていた方が良い。
昔してあげた様に、今は傷に障らない様に軋むベッドに腰掛けて抱いた。

「人が一生の内に出来る細胞分裂の回数は決まってる。」

不良のくせに学のあるラビの苦々しい発言に、改めてラドクリフは肩を震わせる。
レオは男の言葉を殆ど理解出来なかったが、何となくだった不安を確信し、両手を青い顔に添えた。

「じゃあ、坊ちゃまは、命を削って回復してるって事か?」

「レオ、リーダーだ。」

シメオンはそれきり、ラビ同様拳を握って黙った。
皆動けない中、ユージーンだけが壁から離れ、部屋を後にした。

 

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