Milky load.

□]Ubarrier
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完全装備で広い演習場を二周したジーンは、曇りとは言え限界だった。
一人日陰に移動し、装備を外して身体を丸めて横になった。
汗だくだが顔色は真っ青で、頭は高音が鳴り響く様に鋭く痛む。
シメオンは「俺も」と逸脱しかけるレオの首根っこを掴んで列に戻し、「情けない」とばかりに脱落者から目を逸らした。
ラビは「後三周も走れば自分もああなるな」と今からうんざりし、流石に汗くらいは掻いたリーダーはジーンを一人にする訳にも、訓練をサボる訳にもいかず少し考えた。

「俺、先行くから。」

そう言い残し、速度を上げる。
呆気に取られる三人を何度も追い抜き、流石にふらふらになりながら長距離走を終えた。
ラビは息も絶え絶えに吐き捨てる。

「あいつが集団行動とか、言える立場じゃねえだろ。」

「これまでも何か遭ればお一人で?」

「自己犠牲の上に成り立つ解決策をパッと思い付き、思い立ったら実行出来るだけの力がある。俺達じゃ絶対に追い付けねえ。」

「分隊の集団行動が崩壊しているのは自分達の所為ではなく、リーダーの所為だって言いたいのか。」

「おまえ、マスクしてんのに、余裕だな。」

「そうでなくてはリーダーのお役に立てない。リーダーが先に行きたいというのであれば従う。その上でリーダーがリーダーとしてすべき事を補填し支えるのが俺達の仕事だ。」

「たぶん、おまえの言う俺“達”の一人、蛙になったぞ。」

シメオンは少し振り返り、蛙の様にげろげろ鳴いているレオを確認し、溜め息を吐いた。

「我が弟ながら情けない。」

シメオンは膝を付いた者の為に立ち止まったりはしない。
しかし、速度は落ちてもまだ足を動かすラビを引き離して置いて行ったりはしない。
ラビは鼻を鳴らし、歯を食い縛って垂れそうになる涎を必死に飲み込んで地面を踏み締めた。

 

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