Milky load.

□]Zumbra
1ページ/7ページ


煙草に火を付ける以外は魔法が使えないアルヴァートは、リーダー同様銃で敵を殺して行く。
手製の爆弾を使っても良いが建物が崩れかねず、また敵の火薬に引火して大爆発しかねない。
しかし、派手な武器が無くとも、罠を絶妙に配置し、敵の陣形を崩し、そこを確実に潰す事が、今のアルヴァートの得意とする戦法だ。
そんなアルヴァートをクライヴは温かく見守る。

「ちょっと昔までは我武者羅に暴れるだけだったのになあ。」

アルヴァートは折角頭が良いのに、不良と呼ばれたその日からその名に相応しい振る舞いを心掛けている。
事、戦闘に掛けてはただ暴れていたと言っても過言ではない。
しかし、思わず構ってしまいたくなる、どうしても放っておけない、つい何かしてあげたくなる、まるで子犬を擬人化したかの様な少年と出会ってから、急に自分は頭が良い事を思い出し、もう自分が子どもでは無いと気が付いた。
今、そんな暴れ方をするのは ふわふわ と可愛らしい事が仕事の筈の子犬の方だ。

「守りたいものが出来ると人は変わるってわかりやすい一例だね。」

「その守りたいものが戦場で悠長にしないで下さい。」

アルヴァートが少年の声に ハッ とし、クライヴの方に銃口を向けるが合わない。
しかし、クライヴに狙いを付けていた兵士は確かに撃たれ、倒れた。
その背後に、両手を腰に当てたリーダーが立っていた。

「クライヴさんが死んでも別に何とも思わないけど、アルヴァさんが無茶して怪我するじゃないですか。」

「守りたいものはシルヴァだと思うけど。」

クライヴと煙を裂いてナイフを片手に突撃する敵の間にリーダーが割り込む。
既に敵は眉間に穴を開けて倒れていた。

「流石だね。先に胸を撃ったの、わからなかったよ。」

「俺が守られるほど弱くない証拠です。」

「あちゃー。揚げ足を取られちゃった。」

リーダーはクライヴを背に庇い、銃撃で未然に敵を倒して行く。
その間にジーンとラビが建物内を殲滅する為に走り出したアルヴァートの背に続いた。
中庭を挟んだ向こう側の廊下で、フリオがシメオンと共にレオの狙撃に背を任せて闘っている。

「シルヴァ!クライヴさんを頼んだぞ!」

「へ!?」

今まさに自分も駆け出そうとしていたリーダーは盛大につんのめった。

「何で!?アルヴァさん!俺も闘う!!」

リーダーは異を唱えるが、戦闘に集中したアルヴァートが応える事はなかった。

「なんで俺だけ仲間外れ!?しかもどうしてこんな奴のお守りなんてしなくちゃいけないの!?アルヴァさんってば!!」

子犬の様に きゃん きゃん 吠え、その場で地団駄を踏む。
立場上タメ口も許されない下っ端にこんな奴呼ばわりをされた第四部隊隊長は楽しそうに笑うだけだ。
周りの状況を見てお荷物は安全だと踏み、飼い主の“待て”も聞かずに跳び出そうとする細い腰を両腕で捕らえ、抱き上げた。

「離せよ!アルヴァさんとハルさん以外の大人が俺に触るな!」

「躾がなってないなあ。」

クライヴは本物の犬にする様に暴れるリーダーに頬ずる。
いつもはふわふわの毛も、汗や油や汚れや血や、特にワックスで固まっている。
色々残念で溜め息を吐いた。

 

次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ