Milky load.
□][k-night
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夕時。
第四部隊に与えられたシャワールームは熱気と湿気が籠るが、脱衣所は極寒なのだから欠陥としか言い様がない。
しかし、一番汚れる部隊が故にとりあげられたらたまらないので、文句は言えない。
設備からして「死ね」という意向に反し、欠陥シャワールームは今日も面の皮厚く稼働している。
絶え間なく降り注ぐ雫がひび割れたセメントに当たり、歪に反響する。
不協和音に紛れる声は、死神に懐かれるにはまだ早過ぎる、声変わり前の高い音だ。
「もう、やだ!」
「ヤじゃねえっつの。変態に触られたんだから念入りに綺麗にしねえと。」
狭い個室の一室に、大小線の細い影が一つと言っていい程密着していた。
「ジーン、離せ!」
「あー、ミルキー角が丸い。筋肉硬い様な柔らかい様な。」
「ふぇーん!」
濡れるのが嫌いなリーダーはさっさと済ませようと微塵も無駄のない動きで身体を清めていたのだが、そこにジーンが乱入して来て、これだ。
『手伝ってやるよ。』
ジーンは混乱するリーダーを捕縛し、やりたい放題している。
綺麗になっても離そうとはしない。
それどころか泡のついた手でリーダーの身体中を撫で回し続けた。
リーダーは濡れていて嫌だし、くすぐったいし、変な感じがするし、くたびれてジーンの腕の中で しんなり していた。
「他は何処触られた?」
「ひゃあ!?」
そんなリーダーも、他人に触られたくない所を触られれば シャッキリ せざるを得ない。
ジーンの手がリーダーの細い腰に巻かれたタオルの中に侵入する。
「そういうのは自分で洗う!!」
「痛って。」
ジーンは流石にリーダーに どん と押し返され、シャワーを頭から被った。
泡が洗い流され、細く鍛えられた身体が露わになった。
肌理の細かい白い肌に良く目立つ赤黒い殴打痕と、何より浮き出た肋骨が目立つ。
綺麗な身体なのだが、リーダーの青い目が悲しげに俯いた。
「…ごめん。」
「…あー。」
ジーンは濡れた前髪を掻き上げてリーダーを見下ろした。
それは罰の悪そうな仕種にも見えたが、口元はチェシャ猫のように笑ったままだ。
「悪いと思ってんなら大人しくしてろ、ひひっ!」
きゅう。
リーダーを抱き締めるジーンの腕の力はとても優しい。
泣き出したリーダーを慰める為、濡れた髪が引っかからない様に気遣い撫でる方とは反対の手で、まだ泡の残っていたリーダーの耳の裏を撫でた。
「にゃーッ!」
「お?ミルキー実はにゃんこちゃんか?」
「おい馬鹿王子!ガキ相手に何やって!?」
先に出ていたラビがリーダーの長過ぎるシャワーを不審に思い、シャワールームに引き返し、漏れ聞こえる声でやはりと米神に青筋を立て個室のドアを開けた。
見えたのは吹っ飛ばされるジーンと、リーダーの足の裏だった。
ラビは蹴り飛ばされたジーンに巻き込まれて頭を打ち、気が付いたら極寒の脱衣所に寝かされていた。