采配のゆくえ


□世話焼き
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「出掛けたら汗かいた。風呂に入ってくる」
「風呂?焚こうか?手伝おうか」
「んん…いい。シャワー入るから」

吉継がいらないというのだから、手伝いは不要なのだろう。
だがそういっても風呂場で転ばないかとか、何か不便なことはないかとかで、吉継にしつこくまとわりついていたら

「五月蝿い。何かあったら呼ぶから」

と一瞥されてしまった。

しぶしぶ椅子に座って、つくりかけだったプラモに手をつけた。


風呂場からシャワーの音が聞こえた。

「あっ、」

くそ、糊付けする場所間違えた。吉継が気になって集中できない。

いっつもは一緒に入るのに。別に目が見えないことに同情しているのではなくて、ただ心配だから。

(シャワーだったからか?)

確かにちょっと汗かいたからシャワー浴びてくる、程度のことでいちいち干渉されたら迷惑かも。

間違えて糊付けした場所の糊を丁寧にぬぐった。


「高虎、いつもの場所にタオルがないぞ」
「あっ、全部洗濯して干しっぱなしだった」

急いでベランダにいって、干しっぱなしだったタオルを回収する。
脱衣場で吉継がはやく、と急かしているのが聞こえる。
はいはい、今すぐ。


風呂場の鍵
外側からも開けられるようにした、正確には脱衣場、もとい洗面所の鍵。

「開けていい?」
「駄目っていったらどうするんだ?」
「いや開けるけど」

開けてタオルを投げてやった。

「ほい」
「…太陽くさい」
「お日さまの香りと言え」

そのまま脱衣場に自分もはいって、吉継の頭にかかったタオルで髪をぐしゃぐしゃにした。

「おい、自分でもやれる」
「ん?俺がやりたいんだよ」
「…お節介やき」
「何とでも」

俺は特別世話好きってわけじゃない。
ただあんたが好きだからあんたの世話やくのが好きなだけ。



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