REBORN

□九の年 十の冬
1ページ/2ページ

寒いな 寒いな
と思っていたら
気付けば十二月にカレンダーが
捲られていて

早いな
なんて年寄り臭いことを
口から零していた。


「早いね、スクアーロ」
「あぁ?・・・何がだぁ」
「んー、月日が」

年末が近付いている事もあってか、大量にある仕事の報告書に
追われていると言うのに
ちっぽけな言葉にさへ視線を向けてくれる傲慢な愛しい鮫。
そんな些細な事だけにも愛を感じてしまうのは
そろそろ末期だろうかと、窓際から灰色の空を見上げてみる。

「俺達が付き合い始めてからどの位たつのかな」
「・・・・・九年位かぁ」
「そっか、もうそんなにたつんだ」

独り言にも近い、そんな言葉にも律儀に答えて。
クスクスと小さく笑いながら
改めて、時間の流れの早さに驚いた。
初めて会った時の記憶は風化する事無く、つい先週の事
のように頭の中で再生することが出来る程。
色褪せも、ほつれも起こさぬままだ。
最悪な出会いが結果、二人を結びつけたのだから
ある意味では最高な出会いだったのかもしれない。

「じゃあ九回もスクアーロと冬を越えたんだ」
「まぁ、そうなるなぁ」
「えへへ 何か凄いね」
「凄いかぁ?」

九回冬を越えた。
彼は不思議そうな声と共にペンを走らせていたが
何も不思議がることは無いだろう。
思い返してみれば、その九回の冬はとても偉大で、とても大きい。
いつ会えなくなるか分からない
いつ置いていかれるのかも分からない
いつ置いていくかも分からない
そんな中に生きていて
一年を二人で越す事も大変なのに
九回もそれを繰り返した。

「凄いことだよ」

未だに灰色の空からは目を離さないまま、出来る限り思いを乗せて。
少しでも、この気持ちを共有したいと思ったから。
今年も二人で冬を越せるだろうか。
大丈夫、越せる。
確証は無いけど、無駄にデカイ自信がカラダの中を廻っている。

「さてと、俺も仕事しなきゃな」
「溜めとくなよぉ、二人で過ごすんだろぉ」
「当たり前、何の為にスケジュール調整したと思って」

眺め続けていた空から目を離し
変わりに机と溜まった書類に目を落とす。
他愛も無い話をしながら、けれど着実に紙を処分して行く。
これがここ数日の光景。
何時までもこの時間が取れれば
いや
絶対に来年も取ろう。

そんな事を思っていたら
降り出しそうだと思っていた灰色の空から
白い柔らかなモノが降りて来て
今年も二人で終われるな
なんて思いが十回目の冬と一緒に頭をよぎった。





あとがき→
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ