ユグドラシル

□毒の杯を飲み干し
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両腰に履いた細身の剣を使い舞う様に敵を倒す様は、同じ剣を扱う者として純粋に驚嘆と賞賛の言葉しか出ない。

その高みまでいつか辿り着きたいと思ってしまう。





「…剣術を教えて欲しい。」


本題を切り出した俺にカントが驚きの余り立ち尽くす。


「強くなりたい。
庇われ続けるのでは無く、最低自分で自分を守るために。

足手まといになるなんてのはごめんだ。」



ずっと、旅の間中カントやジェイドに庇われ続けた。

それとはなしに分からない様に巧妙に。


けれど分かってしまったから。
その実力差に…。

強く。
強くなりたい。




「…戦う事は私達、軍人、騎士の仕事の様なものです。

その事に対して貴方が引け目を感じる必要は無い。

本来なら貴方が前線に出る様な今の現状がおかしいのです。」


貴方の安全を何よりに考えねばならない筈にも関わらず。


戦う必要は無いと言うカントの言葉に少し笑う。


「今更だろう?
敵に六神将がいる以上、戦力として数えられる頭数が多いに越した事はないだろ。

それに今は俺、一人の身の安全より導師の奪還と王命の遂行が優先だ。」



導師と言うのはそれ程にも重要な位置にいる。

一国家の代表と言うだけに無く、預言を崇拝する人民にとって預言を降すダアトの導師とは代えの無い存在だ。


俺はと言えば第三王位継承者。
代えはいくらでもいる。


カントもそれを分かっているのか、仕方ないですねと言って苦笑する。


彼女が優先するのは導師だ。



「わかりました。
私に出来る限りの事をしましょう。」



こうしてカントと俺の訓練が始まった。






・・・・・





「…っ!」


手の甲に感じた鋭い痛み。
その痛みに咄嗟に木剣を取り落とす。

口からは荒く吐くだけの呼吸しか出来ず、言葉は出ない。

訓練が始まって数日。
俺は連日同じ有様だった。



稽古は砂漠越えと言う道程の合間、一日が終わり夜営中の少しの時間行われた。

まずは最初と言う事で俺は木剣、カントはそこら辺で拾った木の棒を使用した。


内容は簡単。
カントへ一撃当てる事。
カントから反撃は勿論来る。





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