ユグドラシル
□ユグドラシル 11
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乾燥した空気が砂を風に乗せて舞上げる。
ジリジリと照りつける太陽を遮る様に青年、ルークは日除けの着いた外套を目深に被り直した。
身を正せば背中や腰に着けた最低限度の荷物同士がぶつかって耳障りな鈍い音を鳴らす。
ルーク達は僅かしかない導師イオンの手掛かりを求め、砂漠を徒歩で走破すると言う無謀とも取れる行動を起こしていた。
目的地はザオ遺跡。
オアシスの東に沈んだとされる古代都市の廃墟群だ。
ルークは敵でも有るアッシュから挑戦とも取れる伝言を貰っていた。
曰く、導師イオンはザオ遺跡に居る。
取り戻したいなら来い、と…。
結局は全くと言って良い程の手掛かりの無い現状からすればその伝言を信じるしかなかった。
たとえその伝言が自分達を陥れる罠だとしても。
・・・・・
「やっぱり砂漠はキツいよ〜」
うだるような暑さにアニスが何度目かになる音を上げる。
照りつける太陽と足元を埋める砂が徐々に、だが確実に仲間の体力を削っていく。
砂を含んだ空気は乾燥して熱を孕み息を吸い込めば喉と肺が焼かれそうだった。
「まあ、普通は砂漠越えなんてしないからな。
行くにしても六神将の連中みたいに陸艦使うだろ。」
体力の有るガイですら疲労を滲ませた声だった。
「カント大丈夫か?」
斜め前を歩く女性、カントに声をかける。
色素の薄い彼女は頭からすっぽりと分厚い日除けの外套でその身を覆っていて言われなければ誰だか分からない姿をしていた。
かろうじて見える口元に汗を滲ませたものまだ幾分か余裕の有る答えが返ってきた。
「ああ、大丈夫だ。
譜術で水の心配はしなくて良いのだけは救いだな。
手持ちの水だけならドライアップを覚悟しなければならないところだった。」