ユグドラシル

□Sapphire Blue
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「とにかく、このレプリカは私が与ります。
超振動を起こした起こさない、どちらにしろ、余りにイレギュラーな事が多過ぎます。」


その台詞き思わず顔を上げると俺を見下ろしていたディストの視線ともろにかち合う。
耐え切れず、視線を逸らすが注視されているのが分かる。

マズい…。

まさかこのままモルモットよろしく切り刻まれて実験材料にされてしまうのだろうか…。

「間違っても殺すなよ?
被験者はもう居ない次のレプリカを造り出す事は不可能なのだからな。」


師匠はさらりと恐ろしい事を言って部屋から出て行った。

これからどうなってしまうのか…。

考えれば頭が痛いばかり。思わず溜め息を付いてしまう。

「さて、あなたに二、三確認したい事が有ります。
私の話す言葉は分かりますか?」

いつの間にか人払いを済ませたのか、部屋には俺とディストだけになっていた。

しゃがみ込んで俺と視線を合わせた彼の顔は真剣そのもの。
嘘を付く事は許さないとでも言うように真摯だ。

ああ、こんな所を彼。
あの天才軍人に似ていると思った。
何処までも知的欲求が強く自分の興味のある研究、事象に対しては貪欲に真理を求める。
研究者とは皆こんな人ばかりなのだろくか。

「言葉は話せますか?」

繰り返される問い掛けに頷き返してしまった。

気付いた時にはもう遅かった。

レプリカは制作当時、言葉も知識も全くない無知な状態で生まれてくる。
それに基礎知識を刷り込み漸く生活が出来る様になるそれでも人間らしい感情とは程遠いものではあるが。

いつかの自分の様に…。

ああ、どうしよう。
相変わらず馬鹿だ俺。

ただてさえ超振動の件で不信がられているのに、この分だとどう思われるか。

自分の首を絞めてどうするよ…。

「ふむ、では何か話してみてください。」

どうしようかと迷った揚げ句、俺の答えた言葉はとても間が抜けているものだった。

「…こんにちは?」

なんで挨拶しているのだろうこの状態で。
軽く泣きたくなった。

「では名前…、何と呼ばれたいですか?」

ディストの指がさらさらとまだ長いままの前髪を撫でる。



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