そんなに威圧的に尋問しても反発されるだけだと言ってやりたい。
「…このっ!」
兵士の手が俺の顔を隠す外套のフードに延ばされる。
思わず心の中で舌打ちをする。
ここで素顔を晒す訳にはいかなかった。
フードを掴む兵士の手を反対に握り返し、制止してしまう。
その動作に兵士は頭に血が上り、気色ばむ。
フードを掴む方とは反対の手が振り上げられる。
殴られると、どこか冷静な部分で考えている自分がいた。
兵士の分厚い甲冑に包まれた腕が振り下ろされる寸前、第三者の声がその場に割り込んだ。
「何をやっている!」
切り込むかの様な威圧感。
まだ若い声だとしてもその声の持ち主が持つ圧迫感に圧倒されたのか、殴り掛かろうとした兵士が緊張に固まる気配がする。
本当に俺が何かの犯罪者ならあってはならない事なのだが、兵士は驚きの余り俺から手を離してしまった。
俺はと言うと
頭の中は
まさか
まさか
まさか
その台詞で埋め尽くされる
軽く混乱状態だった
恐る恐る視線を上げれば
そこには想像した通りの人
その人は
自分の記憶にある良く知っている姿よりはやや幼く、最後に会った時よりは逞しくなっていた。
眼にも鮮やかな聖なる焔に相応しい深紅の髪
貴石の輝きを持つ緑柱石の色をした瞳
自分と同じで違う姿
愛してやまない被験者
息が詰まり
呼吸が出来なくなる
眼は熱を持ち
油断してしまえば
不覚にも泣いてしまいそうだった
「下がれ」
兵士からしてみれば王命にも等しい効力を持つ紅髪、碧眼の少年の一言に歯向かう訳にもいかず/その色はキムラスカの王族にしか出現しない、早々にその場所から離れた。
一息着いたのもつかの間、いきなり紅に声をかけられる。
「大丈夫か?」
紅は幾分か落ち着いた雰囲気でさすがに次期王位継承者の風格。
落ち着きの無かった自分の時とはえらい違いだ
「済まないが、顔を見せて は貰えないか?」
わざわざ紅がする事は無いだろうに庇った手前俺の素性が気になるのか…。
紅の手が俺に延びる。
兵士の時の様な反発は全く感じない。
それどころか
触れられたいと
触れたいと
感じてしまう
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