Present
□春風に抱かれて
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暖かな風がルークの周りを包み込む。
屋敷の庭で、ルークは瞳を伏せて眠りについていた。
「ルーク」
自分の名前を呼ぶ声に、ルークは静かに目を開く。
瞳に映るのは、自分の被験者。
「あ、アッシュ・・・?」
アッシュは無言でルークの隣に腰を下ろした。
そんなアッシュの姿に、ルークは微笑んだ。
春穏やかな、暖かな風の中。
幸せな時間だけがゆっくりと流れていた。
寒く冷たい冬が終わり、暖かな春の季節が訪れた。
草木は緑に満ち、花が咲き誇る。
バチカルのファブレ公爵の屋敷にも春が満ちていた。
「なぁ、アッシュ」
ルークはそう口を開き、隣に座るアッシュの顔を覗き込む。
何処か疲れているように感じる。
それもその筈だ。
アッシュは国政の執務がある為、ほぼ毎日を王宮で過ごしていた。
本当は、寝る暇すらもないのだ。
「大丈夫か?」
「・・・あぁ。お前に心配される程ではない」
アッシュの言葉に、ルークは本当に心配そうに顔を歪めた。
本当に、無理をしていないのだろうか。
ルークはアッシュに身体を預け、瞳を伏せた。
「あまり、無理・・・しないでよ」
じゃないと、心配で心配で・・・。
暖かな風が、アッシュとルークを包み込む。
2人で居る時は、少しでも心が休まるようにと。