ユグドラシル
□ユグドラシル 10
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新たに神託の盾第六師団所属のカントと言う女性と半ば強引に付いてきた幼馴染みの王女、ナタリアと言うメンバーを増やした一行は昼か夜かも分からない場所を進行していた。
淀んだ油の混じる空気。
閉鎖された場所特有の臭い。
譜石の墜落で出来た王都バチカルを取り囲む様に存在する鉄壁の壁。
そこに造られた今は廃棄された工場。
人目に付かず、六神将の目を掻い潜る為に廃工場の使われなくなって久しい排水用ダクト。
そこを進んでどれくらいたっただろう。
明かりは持ち込んでいたが、閉鎖された空間は無条件に恐怖が煽られる。
メンバーの精神安定を考えるなら早く抜けるに越した事は無い。
訓練されたジェイドの様な軍人やティアなどとは違い幼馴染みの彼女、ナタリアにはキツいものが有るだろう。
「…ルーク、怒ってらっしゃいます?」
思案していれば当のナタリアが声をかけて来た。
再会した時に着用していた装飾の多い動きづらい服装では無く、身動きのしやすい丈の短いスカートに白のブーツ姿で少し困った様に笑う。
「無謀だとは思わなかったのか?」
現王ただ一人の娘。
その身に何か有れば王家の存亡を左右する事になりかねない。
だからこそ何よりも自分を守る為に行動しなければならない。
幼い頃からその重要性を教え込まれてきた彼女が何故、無断で着いて来たのか正直分からなかった。
こちらを見つめる彼女の瞳が悪戯っぽく輝く。
秀麗な口唇が笑みを引く。
「無謀は重々承知ですわ。
ルークこの一件、何かおかしいですわよ。」
聞こえるか聞こえないかで囁かれた彼女の言葉に思い当たる節があった。
「貴方もお気付きでしょう?
余りにも数が少な過ぎますわ。」
数が少ない。
つまりは先発隊を含めた救援隊の事だ。
鉱山とは言え、一都市の人間を救助するには余りにも人員と物資が少なく思えた。