ユグドラシル

□ユグドラシル9
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「ご無事の帰国おめでとうございます。」


バチカル港へと着き、桟橋を降りたところで声をかけられた。

深紅の見慣れた軍服。

現れたのは禿頭の髭をたくわえた男と淡い色素の薄い金髪を高く結い上げた女性だった。

男の方は見覚えがあった。


キムラスカ・ランバルディア王国軍、第一師団長ゴールドバーグ。


会話はした事は無かったが何度か式典で見た事があった。


「アルマンダイン伯爵より報告が届いております。
マルクト帝国からの和平の使者が同行しておられるとか。」


やや高圧的な物言い。
人を使う事を当然とした人物なのだから仕方が無いのだろうか…。

こちらの思いを余所にイオンが進み出る。
一礼をしゴールドバークへと国王陛下への取り次ぎを願い出る。


「無論であります。
皆様の事はこのセシル将軍が責任を持って城にお連れします。」


ゴールドバーグの背後に控えていた女性が進み出、敬礼をする。


「セシル少将であります。
皆様、よろしくお願いいたします。」


少将の紹介に隣に居たガイが明らかに動揺した。
微かに強張った顔に少将も気付いたようだった。


「どうかされましたか?」

少将が聞くもガイは首を振り、自己紹介をしてごまかした。

その流れで皆が自己紹介をし、最後の段に。


「マルクト帝国軍、第三師団師団長ジェイド・カーティス大佐です。
陛下の名代てして参りました。」


いつもと変わらない態度だったが、ゴールドバーグとセシルに緊張が走る。


「…貴公があのジェイド・カーティス…。」


セシルが絞り出すかの様に声を出す。
その顔色は悪い。

ゴールドバーグも同じ様なものだった。


「いやいや、ケセドニアの北部での戦闘ではセシル将軍には痛い思いをさせられました。」


薄い笑みを浮かべジェイドは言うが、セシルは顔面蒼白だった。

やや俯き顔は見えないが悔しさを耐えているのか。


人柄としては些かどころでは無く難があるが、ジェイドは戦闘のプロである。

それは今までの戦闘で身に染みて理解出来た。
その彼に、敵として戦場で合間見えなければならないと言うのは不運以外の何ものでも無いだろう。




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