ユグドラシル
□ユグドラシル 2
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―――幸多からん事を…。
優しい自分の半身の声で覚醒を促される。
ありがとう。
ありがとう。
どれだけ感謝してもし足りない。
自分に甘い半身。
意識して重い瞼を開くと周りの明るさに慣れないためか涙が零れ落ちた。
霞む焦点を無理に合わせてみればそこは見たことの無い場所だった。
薄暗い部屋。
灰色の天井。
見慣れない音機関。
辺りに立ち込めるのはオイルとアルコールの消毒薬の臭い。
……何処だここは?
上体を起こそうとすると酷い眩暈と嘔気に襲われた。それでも無理をして起き上がる。
不意に自分の髪が目に入った。
感じる違和感。
胸の位置より少し長い朱色の髪。
そして余りにも細い腕。
否、全体的に小柄な体。
「……?」
何かがおかしい…。
自分は確かに大きな体格では無かったにしても…。
そこまで考えて思い出すのは何処までも自分に甘い半身の声。
―――全ての始まりの場所へお前を戻そう…。
望むべき『未来』を掴みなさい…。