ユグドラシル

□ユグドラシル 5
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次の日、俺達はチーグルが住むであろう森に入った。

森を入った直ぐの所で導師イオンを保護した。
聞けばおおよそ自分達と同じ理由。

魔物に襲われ譜術を行使したため極端に体力の無くなった導師を連れて結局、森の奥に入る事に為った。

ティアは当然反対した。

だが、どのみち村に連れ帰ろうともまたふらふらと森に一人で入り兼ねない。

それならば少なくとも戦闘でフォロー出来る人間がいた方が良い。

暫く進むと、巨大な樹の元に無数の小型な生き物がいた。
大きな膨らんだ耳に丸い顔に手足も小さくちまちまと動いている。

みゅうみゅうと耳に残る鳴き声が響く。


「ルーク、これを」


イオンが草むらから何かを拾い上げる。
それは真っ赤に熟れた林檎だった。
エンゲーブ産である事の証明、焼印の押された。


「やはり、チーグルが犯人か…。」


イオンは肯定はしなかったが目の前にある巨大な樹を指差す。


「やはり、ここが彼等の巣になっているんですね。」


巨大な樹の洞に足を踏み入れればそこは予想通りチーグルの巣だった。

毛色の違う様々なチーグルが通さないと言うようにこちらに群がる。


「あのっ…、通して…」


イオンが声をかけるも理解できないのか状態は変わらない。

そもそも魔物相手に言葉が理解出来るのかも甚だ疑問ではあるが…。


「みゅうみゅうみゅー」

洞の奥から違うチーグルの声が聞こえた。
まるで老人、老成していると言った方が相応しい声だった。


「…ユリア・ジュエの縁者か?」


他のチーグルが道を開ける進み出たのは腹部に金の輪を嵌めた伸びた眉の為にこちらからは目の見えないチーグルだった。

思わず俺とティアの時が凍り付く。


魔物が喋った…。


驚いていないのはイオンぐらいで何事もなかったかの様に話しを進める。

魔物に律義にも挨拶を交わし聞きたかった本題を切り出す。


「チーグルは本来草食のはず、何故人間の食べ物を?」


長老であるチーグルは震えるように声を出した。

「半月ほど前、我等の同胞が北の地で火事を起こしたのだ。
その結果、北の地を縄張りとしていた《ライガ》がこの森へ移動して来た。
我等を餌とするために…」




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