ユグドラシル

□Verdigris
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初めて出会ったのはいつの事だったか…。
感覚で許される事は無いと信じていた。

だから許されたと知った時。



零れる涙を止める事が出来なかった。

君は少し困った顔をして抱きしめてくれたんだ…。


その温もりが優しくて生きている事を初めて実感出来たんだ。




世界は優しく色を染める。






気持ちの良い風が頬を撫でる。
春先特有の命芽吹く緑と穏やかな光に満たされる。

今は独りだ。
あの二つ括りの導師守護役の少女はいない。

独りになりたいが為に周りに見付からない様に公務の合間をぬって抜け出した。

此処はお気に入りの場所。
鬱蒼と茂る緑に覆われ、周りから隔絶されており人はまず来ない。


時々、自分が分からなくなる。

自分は誰?
自分は何?

造られた代用品。
模造品。

《導師イオン》のレプリカ。

知っている者からはそう呼ばれる事もある。

だけど模造品だとしても。
誰かの代用品だとしても。

《僕ら》は生きている。

世界を感じ。
痛みを感じ。
喜びを感じ。

今を生きている。

誰かの都合の良い《道具》などでは無い。


分かってはいても分からなくなる。

自分は誰?



思考の海に溺れていた事は確かで、迂闊にも人が近付いて来たのが分からなかった。

漸く気付いたのはその人から声をかけられてから。

まさかこんな所に人が来るなんて思わなかったから、余りの驚きで心臓が跳ね上がった。

だけど、その人を見た時、もっとずっと驚いた。

それこそ。



心臓が止まるかと思った程には…。


居るとは知っていた。
だけどその存在を知ってはいたけれど。

会えるとは思いも因らなかった。



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