ユグドラシル
□ユグドラシル 6
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風が吹き
結い上げた髪を散らす
視界に入る髪
その色は偽りで染められて
自分自身の現状を現しているようで
うっすらと笑みが零れる
視線の下
遥か彼方まで広がる大地は東ルグニカ平野
背後で土を踏む音がする
振り返れば碧の髪の少年/シンクが居た
「アッシュ
用意はできたの?」
いつもと変わらぬ口調
いつもと変わらぬ服装
顔を覆い隠す仮面すらも
いつもと同じ
違うところなど
有りはしない
ただ本質を虚像で偽るだけ
「…ああ、出来てるよ」
薄く笑って答えれば
シンクの身に纏う雰囲気が悪化する
機嫌が悪くなる
「…なんでこんな任務…
あの戦艦にはアイヴィが 乗ってるって言うのに」
今回与えられた任務にシンクは最初から不服と言うより不本意極まりない様だった
アイヴィと言うのは【導師イオン】の名前だ
確か本人より乞われてシンクが名を付けたと聞いた事がある
今回俺達、六神将に与えられた任務はマルクト帝国、陸上装甲艦タルタロスより【導師イオン】の奪還
そのための犠牲はやむおえず、目撃者となるマルクト軍、兵士は口封じのため抹殺と言う血生臭いものだった
一旦、戦場になれば何が起こるか分からず
下手をすれば導師の身が危険に晒される
そして何より
平和を望む導師の願いを、導師の望みを叶えたいと思うシンク自身が妨害する事になるなんて思いもよらなかったのではないだろうか
「俺としては導師奪還は不 可能だと思う」
それは確信だった
どう言う事だ、と聞いてくるシンクに笑って答える
「あの【死霊使い】が簡単 に奪還させてくれるとは 思わない」
実際あの時、自分と言う足手まといが居たにも関わらず彼はまんまと六神将から逃げおおせた
そして恐らく今回は足手まといにしかならなかった自分ではなく彼が、あの紅がタルタロスに居る筈だった
ほんの少し
チーグルの森で合間見えただけだったが、あの当時の自分と比べると紅は余程しっかりしていた
彼ならあんなヘマはしないだろう
「【死霊使い】相手に一般 兵士が束になってかかっ ても結果は目に見えてる
それなら俺は互いに犠牲 が一番少ない方法を選択 をするだけだよ」
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