そわそわと落ち着かない。
気を揉んでも仕方は無いとは思いながらも、足は動き部屋を行ったり着たりを繰り返す。
苛々として口元へやった爪を噛む。
落ち着かねばと思う自分がいる。
それと同時に頭の片隅で何て様だと感じてしまう自分がいる。
それでも
それでもだ
思い
心配する
感情は消せない
いや、
更にそれらは増すばかり。
自分でも持て余す感情
その原因は簡単だった。
ほんの数年前から一緒に暮らす事となった子供。
最初は只の監視だった。
イレギュラーな存在。
生まれたばかりの複製品。
管理出来るのは制作者である自分だけだったから。
だが、一緒に暮らすにつれてその子供に絆されるのに時間はかからなかった。
ただ切実に愛情を求め
その実、温もりに手を伸ばす事を極端に怖がる。
その愛すべき子供
その子供が先日から初任務に就いている。
内容は
異常繁殖した魔物の討伐。
決して難しい任務では無い
自分は研究者として殆ど前線には出ないが、副官と一緒に特別に第一師団の黒獅子も参加している。
そのメンバーで何か有る方がおかしい。
自分の余りの過保護ぶりに苦笑がもれる。
落ち着かねば
だけれどそんな戒めも窓の外に見た朱金の髪の小柄な子供を目にした時には頭に無く、柄にも無く部屋を飛び出していた。
・・・・・
一階にある研究室兼自室から建物の入り口までそう距離は無い。
調度、任務を終えた彼等が解散する現場に出くわした
各自、各々解散する兵士に紛れて朱色の小柄な子供が見える。
様子がおかしい…?
子供らしい天真爛漫な気性がなりを潜め、酷く考え込むかの様に沈んでいる。
「…アッシュ?
何か有りました?」
合わせようとした視線を故意に反らされる。
「アッシュ?」
頬に触れようと手を延ばせばその手を叩き弾かれる。
手に感じた軽い痛み。
拒絶された…?
叩かれた痛みよりも、拒絶された事に対して衝撃を受ける。
「…っ!」
一瞬だけ見えた綺麗な翡翠の瞳は真っ赤で今にも泣きそうで、朱色の子供はこちらを振り返る事無く自分の横を通り過ぎて行った。
そして感じた違和感。
いつも日だまりの様な優しい香りがする彼から薫ったのは…。
生臭い血の臭い。
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