ユグドラシル
□ユグドラシル7
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夢を見る
懐かしい夢
愛しげに
名を呼ばれる
その温もりが
体へと触れて来る事が
何よりの幸せだと
想う自分は何よりも
満たされて
その温もりへと
手を延ばす
離さない様に
失わない様に
だが無情にもその温もりは
するりと掌を擦り抜けて
真白き光となって
消え失せる
消えた温もり
途端に襲う飢餓感
叫びたくも叫べ無い苦痛
それが
いつも見る
《自分の夢》だった
悪夢とさえとれる夢
引き剥がされる
苦痛を伴うぐらいなら
見なければ良いと思う
だが
それでも
求めて
求めて
刹那で構わないから
その存在を感じたいと思う
自分がいる事もまた確か
裏腹な感情
だが今回の夢はいつもと少し違った。
失った温もりを手に感じる
まるで大丈夫だと言う様に握り締められているかの様な感覚。
そして手の中に握られていたのは…。
・・・・・
「…っ!」
唐突な覚醒。
夢か現実かの境が酷く曖昧で、一瞬まだ夢を見ているのかと思った。
周りを見渡せばまだ辺りは薄暗く夜明け前。
眠りにある時刻だった。
見た夢を思い出そうとしてみるが、詳しくは分からなくなってしまっていた。
掴み所が無くふわふわと曖昧で願望と理性の間で揺れ動く。
あれだけ大切だと感じたにも関わらず…。
知っている筈の温もり正体も声も顔も色も…。
知っている
知っていた筈なのに
何、一つ分からなくなってしまっていた。
「…どうしたルーク?
眠れないのか?」
声がした方へと顔を向ければ昨日再会したばかりの幼な馴染み/ガイ・セシルだった。
回らない頭でもガイが見張りをしているのだけは理解出来た。
怠い体を無理矢理起こす。
「夢見が悪かったのか?」
かぶりを振るう。
あれは決して悪夢などでは無かった。
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