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□君と歩く
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黒く塗り潰される意識の片隅で約束を交わした相手を思い出した。


…後は頼む。



そこで意識は途絶える。
途絶えた筈だった。



「どうして俺は生きているんだ…?」


呆然と呟いてみても混乱した頭が冷静になる訳では無い。
いくら考えようと答えは出て来なかった。



そらした視線の先に穏やかに深く眠っているルークの姿が見えた。
先程は咄嗟の事で取り乱しはしたが、窺えるルークの顔に苦痛は見られない。

無事に生きているのだと納得すれば安堵と共になかなか目覚めない相手に対して理不尽では有るが苛々とした感情が胸を支配する。


使い物にならなくなった手袋を捨て、初めてまともにルークへと触れる。

思いの外、柔らかい首筋へと触れ念のために脈を確認する。



剣を交えた事なら幾度となく有る。
ルークの意識をアッシュの意識下に置き支配した事も精神を取り込んだ事すら有る。


だが、こうして意識して触れたのは初めてだった。

手袋越しでない素肌に感じた熱がじんわりと染み込む。

皮膚を通して感じる事の出来る心臓の鼓動に何故か酷く安心出来た。


無意識に自分より幾分か幼さの残るまろい頬を撫でる。

ルークがふと息を吐くのが分かった。
僅かな接触が覚醒への引き金となったのか金色へと色を変える朱色の睫毛がゆっくりと開かれる。

記憶に有る通りの色素の薄い翡翠色の瞳がアッシュを見た。

定まらなかった視線が次第に意識を伴って輝きをきつくする。

感情が色をのせる。


「…アッ、シュ…?」


まだ、事態を把握仕切れていない様に呆然としたルークにアッシュは頷いてみせる。

仰向けに倒れたままのルークが手を伸ばしアッシュを確認する様に顔に触れてくる。
振り払う事も出来たがそれも何故か躊躇われて触れて来るのをそのままに許してやる。

「…アッシュ?」


先程より確信を持ってもう一度、かけられた問いかけ。



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