不二受短編

□恋人未満(蔵不二)
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男の子とは、時に可愛いもので。
『え? チョコレート? 好きやで』
白石がそうだった。
『今日は妹のチョコレート試食に付き合うてん。モンブラン味のポルテ美味いで』
聞いてもないのに、電話口でやけに饒舌にチョコレートが好きだと語る白石に、不二は少し考えた。
────僕ら、チョコレートあげたほうがいいのかな。
不二と白石は付き合ってはいない。
友達以上恋人未満という、甚だ微妙なラインの関係だ。
よって、バレンタインの予定は当初不二の頭になかったのだ。
が。
「…郵送でいいなら、姉さんと一緒にチョコレート作ったら送るよ」
ぽそりと言った不二に、白石は。
『ほんまに!? おおきに、不二クン!』
素直に喜んだ。
こう良いリアクションがあると、人間嬉しいもので。
「白石はどんなチョコレートが好きなの?」
不二は、つい尋ねていた。
『不二クンがくれるならどんなんでもええよ』
糖度の高い甘みを帯びた声が返ってくる。
不二はこの、白石の機嫌が良いときに甘くなる声が好きだった。
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