不二受短編
□★Share(跡不二)
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ふたりはテニスサークルに入っていたが、真面目に顔を出す不二とは違って、跡部は名前だけ列ねている幽霊部員だった。跡部は大学の温いテニスサークルでなど遊ばなくても、ときどき帰る自宅にプロを招いて対等に渡り合える立場にあったからだ。
そんなふたりが大学の外で顔を合わせたのは、一年前、一年生の真夏の合コンの席であった。
相手は近くの有名お嬢様大のグループ。
大学の男側も、それなりの顔が揃っていた。
跡部には比べるべくもなかったが、不二もまあまあ女付き合いはあった。
年ごろの男共のようにがっつく真似はしなかったが、ステディもなく何人かの女とは関係していた。
「不二くんって彼女いないの?」
男の好みを熟知したタイプのセミロングの女が、不二の隣に来て誘うように上目遣い。
「うん…。今はいない、かな」
合コン受けするフェミニンなスタイルの控えめな彼女は、さりげなく甘えるように不二に寄りかかってくる。
不二がくすりと笑んだ。
「不二くんってどんな人が好み?」
うーん、と不二が考える風。
「俺のタイプは、こいつみたいなやつ」
突然割り込んできて不二の肩を抱いたのは、跡部だった。
「跡部くん」
跡部は好みでない女に絡まれて、それを避けてやってきたのだ。
「やだぁ。こんなに女の子がいるのに、不二くんがいいっていうの?」
苦笑した彼女は、跡部を軽く睨んで、それでも嬉しそうにしていた。
一方不二は跡部に肩を抱かれたまま、どうしたものかと考えを巡らせる。
「じゃあ、ぼくも跡部みたいな人が好みってことにしておこうかな」