不二受短編

□★Bitter Love(忍不二)
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二月のその日は、例年より冷え込んでいた。
雪こそ降らなかったものの、道行く人はコートを着込んで足早に通りを行く。
不二は時々携帯電話の時計を見ながら『彼』が来るのを待っていた。
氷帝学園、三年。
テニス部レギュラー。
忍足侑士。
不二のセックスフレンドだ。
「……」
約束の時間はとうに過ぎて、日が暮れてすっかり夜になっていた。
不二はかじかむ手をポケットから出して吐息で温めながら、来ない人を思う。
所在を問うメールはしていない。
遅れてくるなら遅れてくるで、向こうからなにか連絡があるはず。
おそらく連絡の取れない状況にいるのだろう。
そう思って、不二は寒空の下、いつまでも噴水の前に立っていた。



しばらく前。
氷帝学園、三年の教室。
「忍足くん。はいこれ、バレンタインの」
「おおきに」
クールな態度で、囲んでくる女の子たちからチョコレートを受け取る忍足に、近くの男子が羨ましげな視線を送る。
「忍足くんに貰ってもらえた〜」
「ねえねえ、忍足くんて彼女いないんでしょ」
忍足の机に手をついて、女の子のひとりが甘えた口調で話しかける。
忍足は冷めた眼で彼女を見返した。
「好きな子もいないのよね?」
「……」
忍足がちらりと視線を空に向ける。
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