不二受長編

□★恋物語(跡不二)
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「なんやて」
急に展開する話に、忍足は着いていかれない。
「とうとう不二に手ぇ出しよるっちゅうことか」
跡部は脚を組んで忍足を見つめると、にやりと笑った。
「手ぇ出すなんて、人聞きの悪いこと言ってンじゃねぇよ。俺がするのは、真面目な告白だ」
清く交際のお付き合いをと伺いを立てるだけの話である。
「女とっかえひっかえやってきた跡部の、清い交際…」
忍足は眼覚め切らない頭で、跡部の言わんとしていることを理解しようとしていた。


今日の体育はバスケだった。
5、6組それぞれ男子約20名ずついるので、計6チーム出来る。
跡部は手塚のチームと当たった。
「アーン? オメーとかよ」
にやりと跡部が笑う。
「跡部様ー!!」
男子の歓声である。
跡部は不二を眼で捜した。
ぱちりと眼が合う。
不二がにこりと、はにかむように微笑んだ。
跡部も眼元を緩める。
試合が始まった。
跡部はオールマイティにスポーツが得意だ。
跡部が試合に出る度にギャラリーから歓声が飛んだ。
試合開始早々、跡部がスリーポイントを決める。
跡部は不二に良いところを見せたかった。
男の恋心だ。
次には相手チームの手塚がパスを受けてゴールを決めた。
跡部と手塚はライバルなのだ。
それに、手塚は不二の親友だった。
それがますます跡部を燃えさせた。
「跡部様ー!!」
聞き慣れた歓声を尻目に、跡部はどんどん試合に夢中になっていった。
ピピー、と笛が鳴る。
結果は僅差で跡部たちの勝利だった。
跡部がちらりと不二のほうを見る。
またしても眼が合った。
常々思っていたが、これはかなり脈ありなのではなかろうか。


不二のバスケは綺麗だった。
しなやかにドリブルで3人を抜き、ゴール前で菊丸にパスを出す。
「英二」
「よしきた」
見事なコンビネーションでゴールを決める菊丸。
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